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【親知らずと神経】パノラマでは「重なって見える」のに、CTでは「離れている」ことがあります

2026年1月9日

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
* 親知らずの抜歯
* 顎関節症の治療
* アスリートのための歯科治療

親知らずの抜歯相談で特に多いのが、
「神経に近い(重なっている)と言われて怖い」
というお悩みです。
今日は、実際に当院で診療したケースをもとに、
パノラマレントゲン(2D)とCT(3D)で見え方が変わる理由、そして
CT撮影が不安の解消と安全性にどう役立つかを、分かりやすく解説します。

「神経に近い」と言われる神経とは?
下あごの親知らず(特に左下・右下)で問題になる神経は、主に
下歯槽神経(かしそうしんけい)です。
この神経は下あごの骨の中を走り、
下唇・あご先の感覚(触った感じ、しびれ感)に関係します。
そのため、親知らずの歯根がこの神経に近い場合、抜歯後に一時的に
しびれ(知覚鈍麻:ちかくどんま)が出るリスクがゼロではありません。

今回のケース:パノラマでは「重なって見える」所見
患者様は左下の親知らずの抜歯希望で来院されました。
歯の状態は半埋伏(はんまいふく)。一部が歯ぐきや骨に覆われているタイプです。
事前のパノラマレントゲン(お口全体を写す2次元の写真)を見ると、
親知らずの根と下歯槽神経の走行が重なって見える所見でした。

ここで重要なのが、パノラマは2D(平面)である、という点です。

なぜ2D(パノラマ)だと「重なって見える」のか?
パノラマは正面からの影絵に近く、
奥行き(前後方向)が分かりません。
つまり、パノラマで重なって見えても、実際には
* 頬側(ほほがわ:外側)に神経があるのか
* 舌側(ぜつがわ:内側)に神経があるのか
* どの程度の距離があるのか
が判別できないのです。
この「奥行き情報がない」という限界が、
不安を大きく見せてしまう原因になります。

CT(3D)で分かった事実:神経は頬側を走行していた
そこで当院では、歯科用CT(CBCT)を撮影しました。
CTは3D(立体)で骨・歯根・神経の位置関係を確認できます。

結果、今回のケースでは
下歯槽神経は歯根に対して頬側(外側)を走行しており、
パノラマで「完全に重なっている」ように見えたものの、
実際には一定の距離が保たれていることが分かりました。
言い換えると、
2Dではぶつかっているように見えるが、3Dでは立体的にすれ違っている
という状態です。
この情報は、患者様にとっても術者にとっても非常に大きな価値があります。

CTを撮る価値は「安心」だけではありません(3つのメリット)
1)不安が「正しいリスク理解」に変わる
「神経に触れているかもしれない」という不安は、
CTで位置関係が分かることで、
管理できるリスクに変わります。
不安を消すためにCTを撮る、というより
不安を正確な情報で置き換える、というイメージです。

2)抜歯の戦略が立つ(どこをどう分割するか)
神経が頬側か舌側かで、
歯を分割する方向や器具の当て方など、術式の考え方が変わります。
CTで事前に分かっていると、
* 分割の設計
* 余計な骨削除を避ける
* 神経側への不要な圧を減らす
など、安全性と精度が上がります。

3)説明が具体的になり、納得して治療に臨める
パノラマだけだと説明がどうしても
「近いかもしれない」「重なっているように見える」
という曖昧さを含みます。
一方CTがあると、
距離・方向(頬側/舌側)・接触の有無を根拠に説明でき、
患者様の納得感が大きく変わります。

大事なこと:「離れている=麻痺リスクゼロ」ではありません
ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。
CTで神経と歯根が離れていることが確認できても、
麻痺(知覚鈍麻)のリスクが完全にゼロになるわけではありません。
抜歯は外科処置であり、
* 術後の腫れ(炎症)
* 術中の圧や牽引
* 個々の解剖学的差
などで、一時的に症状が出る可能性はあります。
ただし、
見えないまま慎重に抜くのと
位置を把握したうえで最大限注意して抜くのでは、
安全性の質がまったく違います。

「神経に近いと言われた」=抜歯できない、ではありません
他院で
「神経に近いから抜けない」
「大学病院を勧められた」
と言われた方でも、CTで正確に評価すると
十分に安全に抜歯可能なケースは少なくありません。
もちろん逆に、CTで本当に近接・接触が強く疑われる場合には、
術式選択や説明をより慎重に行います。
当院では、
抜くためのCTではなく、安全に抜くためのCT
として、必要な方には撮影を推奨しています。

親知らず抜歯で不安がある方へ
* 「神経に近い」と言われた
* パノラマで重なっていると言われた
* 麻痺が怖くて踏み切れない
* できれば安全に、短期間で終えたい
こうした方は、まずは精密診断(パノラマ+必要に応じてCT)からご相談ください。
立体的に見直すことで、解決の糸口が見えることがあります。

よくある質問
Q. パノラマで神経と重なっていたら、麻痺しますか?
A. 必ずしもそうではありません。2Dでは奥行きが分からず、重なって見えるだけの場合があります。CTで頬側/舌側の位置関係を確認することが重要です。
Q. CTは必ず撮りますか?
A. すべての親知らずで必須ではありません。ただし、神経との近接が疑われる所見(重なり、根の形態、骨内の位置など)があれば、CTの価値は非常に高くなります。
Q. CTを撮ったら抜歯は安全ですか?
A. CTは安全性を高める“判断材料”です。リスクをゼロにするものではありませんが、リスクを正確に評価し、戦略を立てるために有益です。



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会