親知らずの無痛治療とは?メリットや注意点について解説
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親知らずの抜歯と聞くと「痛そうで怖い」と不安を抱く方は少なくありません。特に下顎に埋まっている親知らずは難易度が高く、治療への抵抗感が強いケースもあります。しかし、近年は静脈内鎮静法を用いた無痛治療が広がり、ウトウトと眠ったような状態で治療を受けられるようになりました。この記事では、親知らずの無痛治療について詳しく解説します。無痛治療のメリットや注意点、よくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
親知らずの抜歯は大変?無痛治療は可能?

親知らずの抜歯は「とても大変だった」という話を耳にすることが多いですが、実際の難しさは生え方や位置によって大きく異なります。
上顎にまっすぐ生えている親知らずは比較的短時間で処置が可能ですが、下顎で横向きに埋まっているケースは歯を分割して取り出す必要があり、時間もかかります。ただし、歯科医療は日々進歩しており、麻酔技術を使うことで痛みを抑えた抜歯が可能です。ここでは親知らずの抜歯の難易度や無痛治療について解説します。
親知らずの抜歯は生え方で難易度が異なる
親知らずは生える方向や位置によって抜歯の難しさが変わります。真っ直ぐに生えていて噛み合わせに支障がなければ、そもそも抜歯の必要がないこともあります。
しかし、斜めに生えて隣の歯に押し付けるような形になると、虫歯や歯並びの乱れにつながるため、抜歯を勧められるケースが多いです。さらに難しいのが『水平埋伏』と呼ばれる横向きに埋まった親知らずで、この場合は歯肉を切開して歯を砕きながら取り出す必要があります。抜歯の難易度を順に並べると以下の通りです。
- 上顎の生えている親知らず
- 上顎の潜っている親知らず
- 下顎の生えている親知らず
- 上顎の水平埋伏している親知らず
- 下顎の水平埋伏している親知らず
抜歯時間は、上顎のまっすぐな親知らずなら数分で済む場合もありますが、下顎の水平埋伏だと1時間以上かかることもあります。このように生え方によって難易度が大きく変わるため、レントゲンで状態を確認し、歯科医師と治療方針を決めることが重要です。
麻酔の使用により痛みを抑えた抜歯が可能
親知らずの抜歯に不安を感じる人が多いのは「痛み」に対する心配が大きいためですが、現在では麻酔の進歩により痛みを大幅に抑えることができます。一般的には局所麻酔を使って歯の周囲の感覚を麻痺させる方法が取られ、処置中は痛みを感じにくい点が特徴です。
また、強い不安や恐怖心がある場合は、笑気ガスを用いたリラックス効果のある方法や、点滴で鎮静剤を投与する静脈鎮静法が選ばれることもあります。どの麻酔を用いるかは、親知らずの状態や患者さんの体調、不安の程度によって決まります。歯科医師としっかり相談することで、痛みを抑えた安全な抜歯が可能です。
親知らずの無痛治療(静脈内鎮静法)とは

親知らずの抜歯に強い不安を感じる方に用いられる方法の一つが『静脈内鎮静法』です。これは腕から点滴で鎮静薬を投与し、半分眠っているような状態を作り出す麻酔方法です。全身麻酔とは異なり、完全に意識を失うわけではなく、医師からの呼びかけに反応できる程度の意識は残ります。ここでは静脈内鎮静法の特徴と向いている人について解説します。
静脈内鎮静法の特徴
静脈内鎮静法は、患者さんをリラックスさせて治療への恐怖心を軽減する効果があるのが大きな特徴です。点滴を始めると数分で体が温かくなり、ウトウトと眠気が出てくることが多いです。治療中の記憶が曖昧になりやすい傾向があるため、長時間の処置でも短く感じられるメリットもあります。
また、親知らずの抜歯は複雑な場合1時間以上かかることもありますが、静脈内鎮静法を用いるとストレスをほとんど感じずに乗り越えられるのも特徴の一つです。さらに、この方法を使えば複数の歯を一度に治療することも可能で、通院回数を減らすことにもつながります。治療終了後は点滴を外すと徐々に覚醒し、比較的早く普段の状態に戻れるのも安心できる点です。
静脈内鎮静法が向いている人
静脈内鎮静法が向いているのは以下のような人です。
- 歯科治療に強い恐怖や不安を感じる人
- 嘔吐反射の強い人
- 笑気ガスを使用した方法では十分な効果が得られなかった人
静脈内鎮静法は特に歯科治療に強い恐怖を感じる人に向いています。例えば、過去に痛い経験があり治療自体に不安がある人や、器具を口に入れるとえづいてしまう嘔吐反射が強い人に適しているでしょう。また、笑気ガスを用いた鎮静では十分にリラックスできなかった人にも効果的です。
一方で、鼻呼吸がしづらい人や鼻マスクの装着ができない人、特定の持病を持っている方は注意が必要です。そのため、治療を受ける際は事前に体調や既往歴をしっかりと医師に伝え、適応かどうかを判断してもらうことが大切です。静脈内鎮静法を利用することで、恐怖心を抱えている人でも落ち着いて治療を受けやすくなります。
親知らずの無痛治療(静脈内鎮静法)のメリット

親知らずの無痛治療(静脈内鎮静法)の主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 治療中の痛みを軽減できる
- 不安や恐怖を軽減できる
- 健忘作用により嫌な記憶が残りにくい
- 治療後の回復が早い
ここでは上記4つのメリットについてそれぞれ解説します。
治療中の痛みを軽減できる
静脈内鎮静法は、局所麻酔と組み合わせることで痛みを抑えることが可能です。ウトウトとした状態になるため、体はリラックスし、歯を削る音や振動もあまり気になりません。さらに、痛みに敏感な方でも鎮静効果によって神経が落ち着き、処置中に強い痛みを感じにくくなります。通常の局所麻酔だけでは不安という方にとっても、安心して治療を受けられる方法といえるでしょう。
不安や恐怖を軽減できる
静脈内鎮静法を利用することで、鎮静薬の効果により心身が落ち着き、治療中もリラックスした状態を保てます。全身麻酔のように意識を失うわけではないため、安全でありながらも恐怖心や緊張感を和らげることができる点が大きなメリットです。「気づいたら治療が終わっていた」と感じる方も少なくありません。歯科恐怖症の方や、初めての親知らずの抜歯に強い不安を持つ方にとって適した方法です。
健忘作用により嫌な記憶が残りにくい
静脈内鎮静法で使われる薬剤には健忘作用があり、治療中の記憶が残りにくいのが特徴です。処置中にもし一時的に意識が戻っても、後から思い出せないことが多いため、「痛みや恐怖を感じた」という嫌な記憶が残りにくいです。結果として「寝ていたら終わっていた」という感覚にることが多く、歯科治療への苦手意識を軽減する効果も期待できます。今後の通院に対して前向きな気持ちを持ちやすくなるのも大きなメリットです。
治療後の回復が早い
静脈内鎮静法は全身麻酔と違い、治療後に入院の必要がありません。点滴を止めると徐々に覚醒し、少し休むだけで帰宅できるのが特徴です。体への負担も軽く、日帰りで治療を受けられるため、忙しい方にも適しています。また、長時間の治療を一度にまとめて行えるため、通院回数を減らしたい方にも向いています。
親知らずの無痛治療(静脈内鎮静法)の注意点

親知らずの無痛治療(静脈内鎮静法)の注意点は以下の3つです。
- 保険適用外になると費用が高額になる場合がある
- 当日は車や自転車の運転ができない
- 静脈内鎮静法を受けられない人もいる
ここでは上記3つの注意点についてそれぞれ解説します。
保険適用外になると費用が高額になる場合がある
静脈内鎮静法は基本的に保険が適用されず、自費診療扱いとなります。料金は医療機関によって異なりますが、1回あたり2万円〜3万円程度かかるケースが多いです。抜歯や治療そのものが保険診療で行われても、鎮静法だけは別途費用が発生するため、合計金額が想定以上に高くなることがあります。また、治療時間が長くなれば追加料金がかかる場合もあるため、事前に見積もりを確認しておくことが大切です。
経済的な負担も踏まえ、無痛治療を選ぶかどうか検討しましょう。ただし、歯科治療恐怖症の患者さんや小児、また基礎疾患があり特別な配慮が必要な場合など、一部の条件を満たすケースでは保険適用となる場合があります。保険が適用されるかどうかは歯科医院に確認してみてください。
当日は車や自転車の運転ができない
静脈内鎮静法を受けた後は体に眠気やふらつきが残り、判断力や注意力が低下するため、治療後24時間は、車・バイク・自転車を運転することは禁止されています。もし運転して来院した場合は、安全を考慮して治療を中止したり延期したりする医院もあります。帰宅時は公共交通機関を利用するか、家族や友人に送り迎えをお願いするのが安心です。また、帰宅後もしばらくは安静にしなくてはいけないため、階段の上り下りや火を使う作業なども避けるようにしましょう。
静脈内鎮静法を受けられない人もいる
静脈内鎮静法は誰でも受けられるわけではありません。具体的に以下のような人は静脈内鎮静法を受けられない可能性が高いです。
- 妊娠している人
- てんかんや緑内障の既往がある人
- 小顎症・開口障害・極度の肥満状態の人
- 特定の薬を服用中の人(抗HIV薬や向精神薬など)
- 重篤な全身症状がある人
妊娠中の方は流産のリスクがあるため適応外となり、てんかんや緑内障の既往がある方も症状悪化の可能性があるため受けられません。また、極端の肥満や開口障害などがある場合は、緊急時に気道を確保しにくいことからリスクが高まります。さらに、薬剤アレルギーを持つ方や特定の薬(抗HIV薬、向精神薬など)を服用している方も対象外となる場合があります。
静脈内鎮静法による治療を希望する場合は、必ず服薬内容や持病について医師に伝え、安全に対応できるかどうか確認することが大切です。
親知らずの無痛治療に関するよくある質問

親知らずの無痛治療に関するよくある質問をまとめました。
- 親知らずは必ず抜くべき?
- 親知らずの無痛治療の流れは?
- 親知らずの抜歯後の痛みはどれくらい続く?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
親知らずは必ず抜くべき?
親知らずは必ずしも抜かなければならないものではありません。まっすぐ生えていて、噛み合わせや隣の歯に悪影響を及ぼさず、痛みや腫れがなければ経過観察でよい場合もあります。しかし、斜めに生えて隣の歯を圧迫している場合や、汚れがたまりやすく虫歯や歯周病の原因になる場合は抜歯が推奨されます。
さらに、噛み合う相手の歯がなく機能していない親知らずは、残しておくメリットが少ないため抜歯が選択されることも多いです。気になる場合は歯科医院でレントゲン撮影を行い、状態を確認したうえで判断してもらいましょう。
親知らずの無痛治療の流れは?
親知らずの無痛治療の流れは以下の通りです。
- 問診
- 治療説明
- 点滴麻酔
- 歯茎麻酔
- 歯科治療
- 治療終了・休憩
抜歯が終わった後はしばらく休憩し、歩いて帰宅できる程度まで回復してから帰る流れになります。
親知らずの抜歯後の痛みはどれくらい続く?
抜歯自体は麻酔が効いているため、強い痛みを感じることはほとんどありませんが、麻酔が切れた後に痛みが出ることがあります。特に下顎の親知らずは骨が硬いため、処置後の痛みや腫れが強く出ることもあります。
一般的に痛みのピークは抜歯後1〜3日程度で、その後は少しずつ落ち着いていくことが多いです。多くの方は3日〜1週間ほどで日常生活に支障のない程度になりますが、個人差があります。痛みに備えて歯科医院から鎮痛薬が処方されるため、指示に従って服用しましょう。
まとめ
親知らずの無痛治療は、従来の抜歯に比べて治療を受けるときの負担を大きく軽減できる方法です。痛みを抑えるだけでなく、恐怖心や緊張感も和らぎ、健忘作用によって嫌な記憶も残りにくくなります。また、治療後の回復も早いため日帰りで受けられるのも大きな魅力です。
親知らず・顎関節症クリニック銀座では、無痛治療による親知らずの抜歯に対応しています。痛みや恐怖をほとんど感じることなく処置が行えるため、親知らずの抜歯を検討中の方はぜひ当院までご相談ください。
監修歯科医師
医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA
- 〔院長略歴〕
- 鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
- 〔所属学会・所属団体〕
- 歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会

