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「カクッ」と鳴る顎の音、放置していい?──クリック音とⅢa(復位性円板転位)を整理します

2025年12月19日

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
* 親知らずの抜歯
* 顎関節症の治療
* アスリートのための歯科治療

「口を開けるとカクッ」「閉じるとパキッ」
この“クリック音”は、顎関節症の中でも Ⅲa:復位性顎関節円板障害(復位性円板転位) に典型的にみられる所見です。日本顎関節学会の病態分類・診断基準や治療の考え方に沿って、今日は音の正体/受診の目安/リハビリ(セルフケア)/スプリントの適応まで一気に整理します。

1) まず「音の種類」で意味が変わる
顎の音は大きく分けて2タイプあります。
* クリック音(カクッ/パキッ):1回または2回、明瞭なはじける感じ
* クレピタス(ジャリジャリ/ミシミシ):砂を噛むような連続音
クリックは円板のズレと復位を疑う一方、クレピタスは変形性変化など別の病態も視野に入ります。まずここを分けるのが最初の地図です。

2) Ⅲa(復位性円板転位)って何が起きている?
顎関節には、下顎頭と関節隆起の間に関節円板という“クッション”があります。
Ⅲaではこの円板が閉口時に前方へずれていて、開口の途中で円板が「戻る(復位する)」。この戻る瞬間が クリック音 として感じられます。
学会の診断の考え方(ざっくり)
学会の診断基準では、クリックを「触診で確認する」こと、必要に応じてMRIで円板位置を確認して確定診断する考え方が示されています。

3) 「放置していいクリック」と「要注意クリック」
クリック音は音だけだと経過観察で済むこともありますが、次が混ざると話が変わります。

要注意サイン
* 以前はカクッと鳴っていたのに、突然鳴らなくなって口が開きにくい(Ⅲb=非復位を疑う)
* 痛みが増えている(関節痛・筋痛が主役になってきている)
* 開けにくさが進む/朝が特に開かない
* 噛むと関節が痛い、生活に支障
治療は「正しく診断してから始めること」が大原則、という点も学会資料で強調されています。

4) 治療の基本は可逆的・保存的──まずはリハビリ
日本顎関節学会の初期治療ガイドラインでは、成人の顎関節症(筋痛/関節痛)に対して、自己開口訓練(セルフリハビリ)やスタビリゼーション型口腔内装置(スプリント)を提案しています。
ここでは、クリック(Ⅲa)でよく使う「負担を増やさず整える」リハビリを紹介します。

今日からできるセルフケア(目安:2〜4週間)
① 大きく開けない練習(過開口を避ける)
* あくび、硬い物、頬杖、うつ伏せスマホを控える
* まずは関節を鳴らしに行かないのが最短ルート

② コントロール開口(まっすぐ開ける練習)
* 鏡の前で、ゆっくり開閉口
* 下顎が左右にブレる人は「ブレない範囲」で反復
* 1回10往復 × 1日2〜3セット

③ 痛みが強い日は温めてゆるめる
* 顎関節周囲〜咬筋あたりを温罨法(心地よい温度で5〜10分)
* 「動かす前に緩める」がコツ
※痛みや開口障害が強い場合は、無理な運動は逆効果になり得るので、評価してから進めます。

5) スプリントは万能じゃない──「適応が違う」が本題
スプリントと一口に言っても、目的が違います。
スタビリゼーションスプリント(いわゆる安定型)
* 主に 筋の緊張を落とす/顎関節への負荷を減らす/夜間の悪習癖対策 に寄与
* 学会ガイドラインの初期治療で想定されているのも、基本はこのタイプ(上顎型を想定)

リポジショニング系(下顎位を誘導するタイプ)
* クリック(Ⅲa)に対して議論されやすい領域
* 病態・症状・生活背景で向き不向きが強く、合わない使い方をすると違和感や咬合の問題を招くこともあるため、誰にでも同じはやりません(ここが専門性の見せ所)。

結論:
クリックがある=すぐスプリント、ではなく、
「痛みの有無」「開口障害の有無」「生活で困っているか」「ⅢaなのかⅢbなのか」
この整理が先です。学会資料でも、病態分類に沿った診療の重要性が示されています。

6) 目安:3か月で変化が乏しければ次の一手
同じ治療を続けても改善が乏しい場合、早めに専門施設・専門医へ、という付帯事項も明記されています。
クリックは時間が味方になることも多い一方で、見極めを誤ると遠回りになります。

まとめ
* クリック音=Ⅲa(復位性円板転位)の典型
* ただし 音だけ と 痛み・開口障害を伴う では対応が変わる
* 初期は 保存的(リハビリ+負担軽減) が基本
* スプリントは 適応が違う(安定型と誘導型を混同しない)
* 変化が乏しい場合は、早めに評価と方針修正



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会