口腔外科手術後の痛みはいつまで?正しい対処法と回復期間
目次

親知らずの抜歯、インプラント手術、顎関節症の治療など、口腔外科手術にはさまざまな種類がありますが、共通して気になるのが術後の痛みについてです。痛みの程度や持続期間は手術の内容によって大きく異なり、また個人差もあるため、一概に表すことはできません。しかし、事前に正しい知識を持っておくと、術後の経過に対する不安を軽減し、適切な対処ができるようになるでしょう。
この記事では、口腔外科手術後に生じる痛みのメカニズムから、手術の種類別の痛みの特徴、効果的な痛み管理の方法、そして注意が必要な症状の見分け方まで包括的に解説します。また、術後の生活で気をつけたいポイントについても紹介し、術後の回復期間を少しでも快適に過ごせるよう実用的な情報をお届けします。
口腔外科手術後の痛みはなぜ起こるのか

口腔外科手術後に生じる痛みは、手術による組織損傷と体の自然な治癒反応によって引き起こされます。
手術による組織損傷と炎症反応のメカニズム
口腔外科手術では、歯茎や骨、周辺組織にメスや器具による侵襲が加わります。このとき、傷ついた組織から炎症を促進する物質が放出され、血管が拡張して血流量が増加します。この炎症反応は感染を防ぎ、治癒を促進する重要な生体防御機能ですが、同時に痛みや腫れの原因となるものです。
また、手術中に神経が刺激されると痛みの信号が脳に伝達されますが、口腔内は神経が密集しているため、他の部位と比較して痛みを感じやすい特徴があります。
痛みの種類と特徴
術後の痛みには、主に2つの種類があります。
手術直後から数時間続く『急性痛』は、麻酔が切れると現れる鋭い痛みです。一方、数日間持続する『炎症性疼痛』は、腫れや熱感を伴うズキズキとした痛みが特徴的です。このように、口腔外科手術後の痛みは体の正常な反応であり、適切な管理により軽減できる可能性があります。
口腔外科手術の種類別・痛みの持続期間と特徴

口腔外科手術の痛みは、手術の規模や複雑さによって大きく異なります。手術の種類を理解しておくと、回復の見通しを立てやすくなるでしょう。
軽度の処置(小規模な抜歯など)
単純な歯の抜歯や小さな切開を伴う処置では、痛みは比較的軽度で短期間にとどまることが多いです。術後24~48時間以内に痛みのピークを迎え、その後は徐々に軽減します。個人差はありますが、通常1~3日ほどで痛み止めが不要になる程度まで改善するでしょう。このような軽度の処置では、腫れも軽微で、日常生活への影響は限定的です。
中程度の処置(親知らず抜歯・埋伏歯除去)
親知らずの抜歯や歯茎に埋まった歯の除去では、痛みがより強く、長期間続く可能性があります。術後3~7日間にわたって痛みが継続し、なかでも術後2~3日目に痛みのピークを迎えることが一般的です。埋伏歯の場合、歯茎の切開や骨の削除が必要になるため、腫れも顕著に現れます。また、下顎の親知らずでは骨が硬く筋肉に囲まれているため、上顎と比較して痛みや腫れが強くなる傾向があります。
大規模な処置(インプラント・顎骨手術)
インプラント埋入や大きな腫瘍摘出などの大規模な手術では、痛みや不快感が1~2週間以上継続する場合があります。手術が広範囲にわたるため、組織の回復に時間を要し、複数回の通院が必要になることも珍しくありません。このような処置では、術後の管理がとりわけ重要になります。
痛みのピークと回復の目安
多くの口腔外科手術において、痛みは術後24~72時間でピークに達し、その後は段階的に軽減します。軽度な処置では3日ほど、中程度では1週間ほど、大規模な処置では2週間以上を回復の目安として考えておくとよいでしょう。適切な痛み管理により、回復過程をより快適に過ごせます。
口腔外科術後の痛みを和らげる対処法

術後の痛みを適切に管理することで、回復を促進し、日常生活への影響を軽減できます。
処方薬の正しい服用
医師から処方される鎮痛剤は、痛みがピークに達する前に服用することが重要です。麻酔が切れる前、通常は手術後2~3時間以内に初回の痛み止めを服用しましょう。処方薬には主に以下の種類があります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 痛みと炎症を同時に抑制
- アセトアミノフェン
- 痛みを和らげる効果
- 抗生物質
- 感染予防と炎症抑制
服用時は必ず用法・用量を守り、胃への負担を軽減するため食後または軽食と共に服用してください。自己判断での服薬中止は症状悪化の原因となる場合があるため、必ず医師の指導に従いましょう。
自宅でできる痛み管理
術後24~48時間の間に効果を発揮するのが、『冷却療法』です。氷嚢や冷却パックを患部の外側から20分間当て、20分間休むというサイクルを繰り返し、腫れと痛みを軽減できます。ただし、直接氷を当てると凍傷の危険性があるため、必ずタオルで包んでから使用しましょう。
ぬるま湯にひとつまみの塩を溶かし優しくすすぐ『塩水うがい』も、痛み軽減に有効です。ただし術後24時間は強いうがいを避け、軽く口をすすぐ程度にとどめてください。また、安静にすることも重要な痛み管理の一つです。頭を心臓より高い位置に保つよう、枕を使って上体を起こして休むと、血流が改善され痛みや腫れが軽減される場合があります。
やってはいけないNG行動
以下の行動は痛みを悪化させたり、治癒を遅らせたりする恐れがあります。
- 激しいうがいや吸引動作
- 患部を舌や指で触る
- 飲酒や喫煙
- 激しい運動や長時間の入浴
適切な痛み管理により、術後の回復期間をより快適に過ごせるでしょう。
口腔外科手術後の正常な痛みと異常な痛みの見分け方

術後の痛みには、正常な経過と注意が必要な状態があります。適切な判断により、深刻な合併症を早期に発見できるでしょう。
受診が必要なサイン
手術後に以下の症状がひとつでも現れた際は、速やかに医療機関への相談が必要です。
- 痛みの悪化
- 術後3~4日経過して痛みが増す
- 発熱
- 38度以上の発熱が続く
- 腫れの増大
- 術後1週間経過しても腫れが引かない・増す
- 出血の継続
- 24時間以上止血できていない
とりわけ痛み止めを服用しても効果がないときや、夜間に眠れないほどの激痛があるときは緊急性が高いサインです。また、嚥下困難や開口障害が悪化する場合も、炎症の拡大を示している恐れがあります。
ドライソケットなど合併症の症状
『ドライソケット』は、抜歯後の穴を覆う血餅が剥がれることで骨が露出し、激しい痛みを引き起こす合併症です。ドライソケットは通常、抜歯後3~5日目から症状が現れます。
- 【ドライソケットの特徴的な症状】
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- 術後数日経ってから突然激痛が現れる
- 耳や頭部にかけて痛みが走る
- 抜歯窩(歯を抜いた歯茎の穴)から悪臭がする
- 痛み止めが効きにくい
放置すると治癒が大幅に遅れる恐れがあるため、このような症状が現れた場合は我慢せずに治療を受けましょう。
感染症のサインと対応
手術部位の感染は、以下のような症状が判断の手がかりになります。
- 持続する発熱と全身の倦怠感
- 手術部位の強い腫れと熱感
- 膿の排出や悪臭
- 顎下リンパ節の膨らみ
感染症は早期治療により重篤化を防げる場合が多いため、疑わしい症状があれば迷わず相談することが大切です。抗生物質による治療で改善が期待できますが、自己判断での市販薬使用は避けたほうがよいでしょう。
口腔外科手術後に痛みが長引く場合の原因と対策

術後の痛みが予想より長期間続くときは、複数の要因が影響している可能性があります。
個人差による回復期間の違い
痛みの持続期間には個人差があり、年齢、体質、免疫力の状態などが影響するため同じ手術を行っても回復速度は異なります。高齢の方や慢性疾患をお持ちの方では、組織の修復に時間がかかるケースもあります。
また、神経の敏感さや痛みを感じる閾値の違いにより、痛みに対する感受性も個人によって大きく異なるでしょう。このような個人差は正常な範囲内であると理解しておくことが重要です。過去に口腔外科手術を受けた経験があれば前回の回復過程と比較できますが、手術の内容や体調により同じ人でも異なる経過をたどる場合もあります。
生活習慣が回復に与える影響
日常の生活習慣は術後の回復速度に大きく影響します。例えば、喫煙は血流を阻害し組織の酸素供給を妨げるため、治癒が遅れる主要な原因です。また、過度の飲酒も免疫機能を低下させ、感染リスクを高める恐れがあります。
栄養状態も回復に直接関わります。術後は、バランスの取れた食事を心がけることで回復を促進できるでしょう。睡眠不足やストレスも治癒を遅らせる要因となるため、十分な休息も必要です。
医師への相談タイミング
通常の回復期間を大幅に超えて痛みが続くときは、医師への相談を検討しましょう。軽度な処置では1週間、中程度では2週間、大規模な処置では1ヶ月を目安として、それ以上痛みが継続する場合は専門的な評価を受けることをおすすめします。
口腔外科手術後の生活で気をつけたいポイント

術後の生活習慣を適切に管理することで、回復を促進し、合併症のリスクを軽減しやすくなります。
食事と栄養管理
術後の食事は回復に直接影響するため、段階的に食事内容を調整していくことが重要です。
- 術後24~48時間
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- 冷たく柔らかい食品(ヨーグルト、アイスクリーム、スープなど)
- 刺激物や熱い食べ物は避ける
- 十分な水分補給(1日1.5~2リットル)
- 術後3~7日
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- 噛む力をあまり必要としない食品(おかゆ、煮込み野菜、魚のほぐし身など)
- 徐々に固形物を取り入れる
- 辛味や酸味の強い食品は控える
栄養面では、創傷治癒に必要なタンパク質、ビタミンC、亜鉛を意識的に摂取しましょう。これらの栄養素は組織の修復を促進し、免疫機能を支える働きがあります。また、アルコールは血流に影響し治癒を妨げる恐れがあるため、回復期間中は控えるのをおすすめします。
口腔ケアの方法
術後の口腔ケアは感染予防と治癒促進の両面で重要です。ただし、通常のケアとは異なる注意点があります。
- 歯磨き
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- 術後24時間は手術部位の歯磨きを避ける
- 柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨く
- 歯磨き粉は刺激の少ないものを選ぶ
- うがい
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- 術後24時間は激しいうがいを避ける
- 塩水うがい(ぬるま湯にひとつまみの塩)を1日3~4回実施する
- 強く吐き出さず、優しく口をすすぐ程度にとどめる
抗菌性のマウスウォッシュが処方された場合は、医師の指示に従って使用してください。ただし、アルコール系のマウスウォッシュは刺激が強いため、回復期間中は避けるのが望ましいです。
運動・入浴の制限について
手術後の活動制限は出血や腫れの悪化を防ぐために必要です。
- 術後24~48時間
-
運動制限: 安静を保ち、激しい運動は避ける
入浴制限: シャワーのみ、長時間入浴は避ける
- 術後1週間
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運動制限: 軽い散歩程度から再開
入浴制限: ぬるめのお湯で短時間入浴
- 術後2週間
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運動制限: 通常の運動レベルに段階的に戻す
入浴制限: サウナ・温泉は控える
これらの制限を守ることで、順調な回復が期待できるでしょう。
まとめ
口腔外科手術後の痛みは、組織損傷と炎症反応による自然な現象です。手術の規模により痛みの持続期間は異なりますが、適切な痛み管理と生活習慣の調整により、回復を促せます。処方薬の正しい服用、冷却、段階的な食事管理が重要なポイントです。一方で、激しいうがいや刺激物の摂取は避けたほうがよいでしょう。痛みが長引くときや発熱・腫れの悪化などの症状が現れた場合は合併症の恐れがあるため、適切なタイミングで医療機関に相談することが大切です。
『親知らず・顎関節症クリニック銀座(オヤアゴ銀座)』では、口腔外科専門医による痛みに配慮した治療を提供しています。難症例の埋伏歯抜歯や静脈内鎮静法による怖くない抜歯にも対応し、術後の痛みや腫れについても豊富な経験に基づいた適切な管理でサポートいたします。口腔外科手術に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
監修歯科医師
医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA
- 〔院長略歴〕
- 鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
- 〔所属学会・所属団体〕
- 歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会

