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顎関節症にスプリントは本当に有効?現在の考え方と、それでも使う意味について

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
* 親知らずの抜歯
* 顎関節症の治療
* アスリートのための歯科治療

本日は顎関節症についてお話ししたいと思います。
当院には親知らずのご相談だけでなく、顎関節症で悩まれている患者様も非常に多く来院されます。
特に多い訴えは、次の3つです。
・口が開かない
・顎が痛い
・口を開けると音が鳴る

「大きく口を開けると痛い」「食べにくい」「顎が引っかかる感じがする」「カクカク音がする」など、症状の出方はさまざまです。
音だけが気になる方もいれば、音に加えて痛みや開口障害を伴う方もいらっしゃいます。

顎関節症はひとつの病気ではありません

顎関節症は一括りにされがちですが、実際には病態がさまざまです。
日本では一般的に、筋肉の問題、関節円板の問題、関節の炎症や変形などに分類して考えます。日本顎関節学会の近年の整理でも、顎関節症は単純な「噛み合わせの病気」ではなく、筋・関節・生活習慣・心理社会的要因などが複合して起こる病態として捉えられています。
そのため診察では、
・どの動きで痛いのか
・どこまで口が開くのか
・音はクリック音か、ジャリジャリした音か
・咀嚼筋の圧痛があるか
・関節円板の異常が疑われるか
・レントゲンや必要に応じてCTでどう見えるか

こうした点を総合して、病態を見極めていくことが重要です。

「食いしばりがあるから顎関節症になる」とは言い切れない

ここでよく聞かれるのが、
「食いしばりや歯ぎしりが原因なら、スプリントを入れれば治るのですか?」
というご質問です。
以前は、顎関節症と噛み合わせ、あるいは食いしばりとの関係をかなり強く結びつけて考える傾向がありました。
しかし現在は、世界的にも国内的にも、顎関節症を単純に噛み合わせのずれや食いしばりだけで説明する考え方は支持されにくくなっています。
また、睡眠時ブラキシズムについても、直接の単一原因として断定するのではなく、リスク因子のひとつとして扱う考え方が主流です。
さらに、近年のレビューでは、オクルーザルスプリントが他の保存療法より明確に優れているとは言い切れない、あるいは理学療法などと長期成績が大きく変わらないとする報告もあります。

つまり、
「顎関節症=スプリントで治す病気」ではない
というのが、現在の基本的な考え方です。

ではスプリントはもう不要なのか?

ここで誤解してはいけないのは、
万能ではないことと、無意味であることは全く違う
という点です。

実際には、スプリントによって症状が軽減する患者様は少なくありません。
・起床時の顎のだるさが軽くなる
・咀嚼筋の緊張がやわらぐ
・関節への負担感が減る
・朝のこわばりや痛みが楽になる
・「守られている感じ」があり安心して眠れる

このように、症状の緩和や自己管理の助けとして有効に働くことがあります。
一方で、すべての方に同じような効果が出るわけではなく、効果の程度にはかなり個人差があります。

スプリントの有用性が限定的とされる理由

スプリントの評価が以前より慎重になっているのには理由があります。
まず、顎関節症そのものが自然軽快する例も多いことです。
そのため、スプリントを入れて良くなったとしても、それが装置の効果だけなのか、時間経過や生活習慣の改善によるものなのかを切り分けるのが簡単ではありません。
また、顎関節症の原因は1つではありません。
筋肉の使いすぎ、ストレス、睡眠の質、日中の食いしばり、姿勢、習慣的な片噛み、炎症、関節円板の異常など、多くの要素が絡みます。
そのため、スプリント単独で全てを解決することは難しいのです。
さらに、現在は不可逆的な咬合調整や「正しい顎位」を無理に作るような考え方には慎重であるべきとされています。アプライアンスを使って新しい顎位を決め、その位置に合わせて大きく補綴や矯正を進める二段階的な考え方については、不要性が指摘されています。

それでもスプリントを使うメリット

それでも、スプリントには臨床的な意義があります。
当院としては、スプリントは
「顎関節症を必ず治す魔法の装置」ではなく、症状を和らげるための保存的な選択肢の一つ
として考えています。
メリットとしては、
・可逆的である
・比較的低侵襲である
・咬耗や歯への過剰な負担を軽減しやすい
・顎関節や咀嚼筋への負担感が減る場合がある
・セルフケアを意識するきっかけになる

といった点が挙げられます。
特に、筋肉の緊張が強い方や、夜間の食いしばりによる朝の症状が目立つ方では、試してみる価値があるケースはあります。日本のガイドラインでも、成人の筋痛・関節痛に対しては、病態説明、セルフケア、理学療法、薬物療法、アプライアンス療法などの可逆的な保存療法を中心に考えることが示されています。

顎関節症治療で大切なのは「スプリントを入れること」ではなく「見極めること」

顎関節症では、
音が鳴るだけなのか、
痛みがあるのか、
口が開かないのか、
筋肉由来なのか、関節由来なのか、
円板の問題なのか、炎症なのか、変形なのか。
ここを見極めずに、全員に同じ治療をするのは適切ではありません。
スプリントが合う方もいれば、まずは生活指導やセルフケア、開口訓練、消炎鎮痛、習癖の是正が優先となる方もいます。
逆に、開口障害が強い場合や関節円板障害、変形性変化が疑われる場合には、画像検査も含めてより丁寧な評価が必要です。

まとめ

顎関節症は、
「噛み合わせだけの問題」でもなければ、
「スプリントだけで解決する病気」でもありません。
一方で、スプリントは現在でも、症状緩和や負担軽減のための有効な保存的治療の一つです。
大切なのは、スプリントを入れること自体ではなく、
その方の症状や病態に本当に合っているかを見極めることだと考えています。
顎が痛い、口が開きにくい、音が鳴る、朝起きると顎が疲れている。
そのようなお悩みがある方は、我慢せず一度ご相談ください。
親知らずだけでなく、顎関節症についても、症状と原因を丁寧に整理しながら治療方針をご提案いたします。



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会