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顎関節症に対するボトックス注射の効果は?副作用やリスクについても解説

2025年12月25日

「BOTOX」と書かれた薬剤の入った瓶と注射器、聴診器

顎関節症はマウスピースや生活習慣の改善で対処することが多いですが、近年は『ボトックス注射』が注目を集めています。ボトックスには筋肉の緊張を和らげる作用があり、顎関節症の原因となる食いしばりや歯ぎしりを軽減する効果が期待できます。顎の痛みだけでなく、肩こりや頭痛に悩まされている人にも適した治療方法です。

この記事では、顎関節症に対するボトックス注射の具体的な効果について解説します。ボトックス注射の副作用・リスク、よくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

顎関節症とは

頭蓋骨の模型

顎関節症とは、口を開け閉めする際に顎の関節や周囲の筋肉に痛みや違和感が出る病気のことを指します。代表的な症状には「口を大きく開けにくい」「開閉のときにカクッと音がする」「顎に痛みが出る」などがあり、食事や会話に影響を及ぼすこともあります。症状は一時的なことも多く、生活習慣の見直しやセルフケアで改善するケースも少なくありません。しかし、長引いたり悪化すると日常生活に支障をきたす場合があるため注意が必要です。

原因は1つに絞ることが難しく、歯ぎしりや食いしばり、姿勢の悪さ、ストレスなど複数の要素が組み合わさって起こることが多いとされています。ここでは顎関節症の主な症状と原因について解説します。

顎関節症の主な症状

顎関節症の主な症状として、以下が挙げられます。

  • 口が開けにくくなる
  • 口を大きく開けると音がする
  • 顎関節を押すと痛みが出る
  • 顎関節がロッキングしてしまい、開閉が困難になる

顎関節症の症状は人によって異なりますが、共通してみられるのは 「顎の痛み」や「口の開閉の制限」です。例えば大きく口を開けると顎の付け根に痛みが走ったり、指が3本分以上入らないほど開けにくくなることがあります。また、口を動かすと「カクッ」「ゴリッ」といった音がするのも特徴です。

さらに、食事中に顎がだるくなる、噛みづらいといった違和感を覚える人もいます。重症になると顎がロックされてしまい、口を開けたり閉じたりできなくなるケースもあります。これらの症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多いですが、放置すると肩こりや頭痛、歯の摩耗など二次的なトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

顎関節症の主な原因

顎関節症は一つの原因だけで起こるのではなく、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。具体的には以下のような原因があります。

  • 上下の歯を無意識に接触させる癖(TCH)
  • 歯ぎしりやうつぶせ寝などの生活習慣
  • 心理的なストレス
  • 特定のスポーツや楽器演奏
  • 事故や転倒による外傷

多くの患者さんに見られるのが、歯を無意識に接触させる癖(TCH)です。本来、上下の歯は安静時には離れているのが自然な状態ですが、緊張や集中しているときにかみ合わせが続くことで顎に負担がかかります。さらに歯ぎしりや食いしばり、うつ伏せ寝、頬杖、片側だけで噛む癖などの生活習慣も原因になります。

心理的な要因も大きく関わっており、精神的なストレス自体がTCHを強めることも少なくありません。また、スポーツや楽器演奏のように強く噛みしめる動作、事故や転倒による外傷も要因となります。このように、顎関節症はさまざまな原因が複雑に絡み合って発症します。

顎関節症にはボトックス注射が有効

ボトックスの薬剤が入った6本の瓶と1本の注射器

顎関節症は食いしばりや歯ぎしり、筋肉の過緊張などによって起こることが多く、日常生活の中で強いストレスや癖が重なると症状が悪化する傾向があります。従来はマウスピースによる治療や生活習慣の改善が中心でしたが、最近ではボトックス注射を取り入れる歯科医院も増えています。

ボトックスには筋肉をリラックスさせる働きがあり、噛む筋肉の過剰な動きを抑えることで、顎関節にかかる負担を和らげる効果が期待できるのです。特に、マウスピースが合わない方や日常生活に強い食いしばりの癖がある方にとって、ボトックスは選択肢の一つとなります。ここではボトックス注射の特徴や注射部位・持続時間などについて解説します。

ボトックス注射とは

ボトックス注射とは、ボツリヌストキシンという成分を筋肉に注入し、過剰な動きを抑えてリラックスさせる治療方法です。美容の分野では表情じわを目立たなくする施術として知られていますが、歯科では顎関節症や歯ぎしりの治療にも応用されています。ボツリヌストキシンは神経と筋肉の間の信号を一時的にブロックすることで、筋肉の過度な収縮を抑制します。この働きによって噛む力を弱めることができ、顎関節への負担が減少するという仕組みです。

もともと体内に害を与える菌そのものを使うわけではなく、毒素から抽出された成分を安全に使用するため、感染の心配はありません。注射を受けた後は3~4日ほどで効果が現れることが多く、痛みの軽減や顎の疲労感の改善を感じる人が多いです。ただし、ボトックス注射は保険適用の承認適応ではありません。治療を受ける際は、自由診療となることには注意が必要です。

注射部位

歯科で行うボトックス注射は、主に噛むときに使われる筋肉に対して行われます。代表的なのは『咬筋(こうきん)』と呼ばれるエラの部分にある筋肉で、食いしばりの強い人はこの部分が発達していることが多いです。咬筋に注射することで力が弱まり、顎関節の負担が減ります。また、こめかみにある『側頭筋』や顎先にある『オトガイ筋』なども対象となる場合があります。

これらは噛む動きや口元の緊張に関わる筋肉で、強い食いしばりや口の閉じにくさを和らげるのに効果的です。美容クリニックでは顔全体やわきなどに注射することもありますが、顎関節症の治療ではあくまで噛むときに使われる筋肉にピンポイントで行うのが特徴です。

持続時間

ボトックス注射の効果は永久的ではなく、一般的に3〜6か月程度が目安です。注射をしてからすぐに変化が出るわけではありませんが、多くの場合3~4日後から効果を実感できるようになります。効果が続く期間には個人差がありますが、回数を重ねることで持続時間が少しずつ長くなる傾向があります。効果が切れると筋肉は元の状態に戻るため、食いしばりや顎の痛みが再発することがある点は理解しておきましょう。

そのため、症状の状態に応じて定期的に注射を受けることが推奨されます。日常的なケアや歯科でのメンテナンスと併用することで、より安定した症状の改善が期待できるでしょう。

ボトックス注射の主な効果

ボトックスの薬剤が入った瓶と注射器

ボトックス注射の主な効果として、以下の4つが挙げられます。

  • 顎関節症の緩和
  • 歯ぎしりや食いしばりの軽減
  • 食いしばりが原因で起こる頭痛や肩こりの緩和
  • 歯ぎしりによる歯周病の進行の予防・緩和

ここでは上記4つの効果についてそれぞれ解説します。

顎関節症の緩和

ボトックス注射は咬筋や側頭筋といった噛む力に関与する筋肉に作用し、過剰な緊張を抑えることで顎関節への負担を軽減します。その結果、口の開閉がスムーズになったり、顎の痛みや違和感が和らいだりすることがあります。症状が軽度から中等度の場合には特に有効とされますが、重度の顎関節症では十分な効果を得られないこともあるため、医師と相談しながら適切な治療計画を立てることが重要です。

歯ぎしりや食いしばりの軽減

歯ぎしりや食いしばりは、就寝中や日中の無意識のうちに起こりやすい癖です。これらの癖は歯や顎に強い負担を与え、歯の摩耗や破折といったトラブルを引き起こします。ボトックス注射を咬筋に打つと、筋肉の過剰な収縮が抑えられ、噛む力が自然に弱まります。その結果、歯ぎしりや食いしばりの頻度や強さが減り、歯や顎への負荷が少なくなるのです。

食いしばりが原因で起こる頭痛や肩こりの緩和

強い食いしばりは顎の筋肉だけでなく、こめかみにある側頭筋や首・肩の筋肉にも負担をかけ、慢性的な頭痛や肩こりの原因になることがあります。ボトックス注射で筋肉をリラックスさせると、無意識に噛みしめてしまう力が弱まり、筋肉の緊張が和らぎます。これにより、頭痛の頻度や肩のこわばりが軽くなる可能性があるのです。

特に「仕事中に肩がこる」「朝起きると頭が重い」といった症状がある方は効果を実感しやすいとされています。薬に頼らずに症状をコントロールできる点もメリットの一つです。

歯ぎしりによる歯周病の進行の予防・緩和

歯ぎしりは歯そのものだけでなく、歯を支える骨や歯茎にも大きなダメージを与えることがあります。強い力で繰り返し歯を噛み合わせることで歯周組織に負担がかかり、歯周病の悪化を助長する場合があるのです。ボトックス注射により噛む力を和らげることで、歯や歯茎に加わる圧力が軽減され、歯周病の進行を抑える効果が期待できます。

また、詰め物や被せ物の破損、歯の亀裂などのリスク低下にもつながります。歯周病治療やメンテナンスと並行して行うことで、口腔内の健康をより安定して守ることができる点が大きなメリットです。

ボトックス注射の副作用・リスク


ボトックス注射は比較的安全性の高い治療法といわれていますが、医療行為である以上、副作用やリスクがまったくないわけではありません。主な副作用・リスクとして、以下が挙げられます。

  • 注射部位の痛み・腫れ・内出血
  • 皮膚の違和感
  • 一時的な筋力低下
  • 頬の凹みや肌のたるみ
  • 注射部位の感染
  • アレルギー反応

ここでは上記6つの副作用・リスクについてそれぞれ解説します。

注射部位の痛み・腫れ・内出血

ボトックス注射は細い針を使用しますが、注射直後にチクッとした痛みや違和感を覚えることがあります。さらに注入部位に赤みや腫れ、内出血が生じることもあります。

通常は数日から1週間程度で自然に落ち着くことが多いです。血管が皮膚の浅い部分に多い人や、もともと内出血しやすい体質の人は、あざのような跡が残る場合もありますが、時間の経過とともに薄れていきます。通常は大きな問題にはならないものの、腫れや痛みが長引くときにはアレルギーや感染の可能性も否定できないため、早めに医師に相談しましょう。

皮膚の違和感

注射後、皮膚が引っ張られるようなつっぱり感や、表情がややこわばるような違和感が出ることがあります。これは筋肉の動きが弱まることで生じる一時的な症状です。

また、食事の際に固いものを噛みにくいと感じたり、顎に疲れを覚えたりすることもありますが、ボトックスの効果が体内で徐々に薄れていくにつれて改善される傾向があります。日常生活に支障をきたすことは少ないですが、最初の治療では特に違和感を覚えやすいため、事前に想定しておくと安心です。

一時的な筋力低下

ボトックスは筋肉の動きを弱める作用を持つため、施術直後は噛む力が弱くなったと感じることがあります。特に治療後1か月程度は、固い食べ物を食べにくい、口を大きく開けにくい、顎がだるいといった症状が出ることも珍しくありません。

また、表情筋に影響が及ぶと、口角が上がりにくくなり、一時的に表情が不自然に見えることもあります。これらはあくまで効果が持続している間の症状で、数か月経つと自然に改善されていきます。

頬の凹みや肌のたるみ

咬筋にボトックスを注射すると、筋肉の収縮が抑えられることでボリュームが減少し、結果的にエラがすっきりする効果が期待できます。ただし、人によっては筋肉が落ちすぎてしまい、頬がへこんで見えたり、皮膚が余ってたるんで見えたりすることがある点には注意が必要です。

特に皮膚が薄い方や年齢を重ねている方は、この副作用が出やすい傾向があります。薬剤の量を調整することである程度リスクを抑えられますが、仕上がりには個人差があるため、医師と十分に相談することが大切です。

注射部位の感染

ボトックス注射で感染が起こることはまれですが、皮膚に針を刺す以上、完全にリスクがゼロになるわけではありません。施術後に強い赤みや腫れ、熱感が続く場合は、細菌感染の可能性があるため注意が必要です。多くのクリニックでは清潔な環境で施術が行われており、リスクを抑える体制が整っていますが、体調が悪いときや免疫力が落ちているときには感染のリスクが高まることもあります。異変を感じたら自己判断せず、早めに受診することが大切です。

アレルギー反応

ごくまれではありますが、ボトックスに含まれる成分に対してアレルギー反応を示す場合があります。主な症状は発疹、かゆみ、腫れなどです。強い症状が出ることもあるため、既往歴やアレルギー体質については事前に医師に伝えておく必要があります。過去にボトックス治療を受けたことがある方も、体調や体質の変化によって反応が出ることがあるため、注意が必要です。

顎関節症のボトックス注射に関するよくある質問


顎関節症のボトックス注射に関するよくある質問をまとめました。

  • ボトックス注射を受けるときの注意点は?
  • 1回の治療で効果を実感できる?
  • ボトックス注射ができない人はいる?

ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。

ボトックス注射を受けるときの注意点は?

ボトックス注射を受けた後は、注射部位に腫れや内出血が出ることがあります。多くの場合は数日から1週間ほどで自然に治まりますが、気になる場合は冷やすなどのケアを行い、症状が長引く場合は医師に相談することが大切です。また、注射後すぐに激しい運動や飲酒をすると腫れや内出血が悪化する可能性があるため、控えるのが望ましいです。その他、基本的には普段の生活に大きな制限はありません。

1回の治療で効果を実感できる?

ボトックス注射は、1回の治療でも効果を感じられるケースが多いです。施術を受けてから3~4日後から徐々に効果が現れ、1週間程度でしっかりと実感できる方が多いとされています。ただし、ボトックスの効果は永久的なものではなく、一般的には3〜6か月ほどで薄れていきます。

そのため、治療後の状態を維持するためには定期的な注射が必要です。また、筋肉の状態や症状の程度によっては、初回の効果がやや弱い場合もあります。その場合でも繰り返し施術することで持続時間が長くなる傾向があるため、医師と相談しながら適切なタイミングで治療を受けると良いでしょう。

ボトックス注射ができない人はいる?

ボトックス注射ができないのは以下のような人です。

  • 妊娠中や授乳中の人
  • ボトックスやその成分に対するアレルギーがある人
  • 筋肉障害や神経障害がある人
  • 感染症や皮膚の炎症がある人
  • 抗凝固薬を服用している人

状況によっては治療が受けられる場合もあるため、自己判断せず、まずは医師に相談してみることをおすすめします。

まとめ

顎関節症に対するボトックス注射は、筋肉の過剰な緊張を抑えることで、症状を改善する効果が期待できる治療法です。副作用として一時的な腫れや筋力低下が起こることもあるため、信頼できる医師のもとで治療を受けることが大切です。顎関節症の症状に悩んでいる方は、ボトックス注射を一つの選択肢として検討してみても良いでしょう。

親知らず・顎関節症クリニック銀座では、顎関節症に対するボトックス注射に対応しています。食いしばりや歯ぎしりによる顎の痛み・頭痛・肩こりなどにお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会