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顎関節症を放置するリスクは?自然治癒の可能性や治療方法についても解説
2025年12月23日

顎関節症は「口を開けるとカクカク音がする」「噛むと顎が痛い」といった症状が特徴的ですが、軽い不調だからと放置してしまう人も少なくありません。しかし、症状をそのままにしておくと、痛みが強くなるだけでなく噛み合わせの悪化や全身の不調につながる可能性があります。初期の段階であればセルフケアや生活習慣の見直しで改善が期待できますが、悪化してからでは治療が長引くこともあるため注意が必要です。
この記事では、顎関節症を放置する危険性について詳しく解説します。セルフケア方法や治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
顎関節症とは

顎関節症とは、顎の関節やその周囲の筋肉、関節円板などに異常が起こり、痛みや動かしにくさを感じる状態のことを指します。ここでは顎関節症の主な症状・タイプ・原因などについて解説します。
顎関節症の主な症状
顎関節症の主な症状は、大きく分けて「顎の痛み」「口が開かない」「顎を動かすと音がする」の3つです。顎の痛みには、関節そのものに炎症が起こる『顎関節痛』と、顎を動かす筋肉の使い過ぎにより生じる『咀嚼筋痛』があります。これらは耳やこめかみにまで広がり、頭痛や耳の痛みとして感じる人もいます。
また、口が十分に開けられない「開口障害」も特徴的な症状の一つです。通常であれば指3本分ほど開きますが、それができないと顎関節症の可能性が考えられます。さらに、開閉時に「カクカク」「ジャリジャリ」と音がする『顎関節雑音』も多くみられる症状です。
顎関節症の4つのタイプ
顎関節症は、日本顎関節症学会により以下の4つのタイプに分類されています。
- Ⅰ型(咀嚼筋痛障害)
- 噛む筋肉の使い過ぎや緊張によって痛みが出るタイプ
- Ⅱ型(顎関節痛障害)
- 顎関節周辺の炎症によって痛みが出るタイプ
- Ⅲ型(顎関節円板障害)
- 関節のクッションである円板がずれて、開口時に制限や雑音が出るタイプ
- Ⅳ型(変形性顎関節症)
- 骨が変形してしまうことで、開口時にシャリシャリとした音や痛みを伴うタイプ
症状の現れ方によって治療法も異なるため、正しい診断を受けることが大切です。
顎関節症の主な原因
顎関節症の原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症することが多いです。
- 無意識に上下の歯を接触させる癖(TCH)
- 頬杖をつく、片側の歯でばかり噛むなどの日常習慣
- 夜間のうつぶせ寝や歯ぎしり
- 歯を食いしばる動作
- 外傷
- ストレス要因
代表的なのは歯ぎしりや食いしばりといった習慣で、特に 無意識に上下の歯を接触させる癖(TCH)は多くの患者さんにみられます。これらの生活習慣や心理的要因が組み合わさり、顎関節に負担を与えることで、顎関節症の発症につながると考えられています。
顎関節症は放置するとどうなる?

顎関節症は、軽度のうちは「顎がカクカク鳴る」「少し痛む」程度で済むこともあり、そのまま放置してしまう人も少なくありません。しかし、放置すると症状が進行し、顎の機能に大きな支障をきたす可能性があります。顎関節症を放置するリスクは以下の通りです。
- 顎関節の痛みや違和感が悪化する
- 噛み合わせが悪くなる
- 全身症状に進行する可能性もある
ここでは上記3つのリスクについてそれぞれ解説します。
顎関節の痛みや違和感が悪化する
初めは軽い違和感程度であっても、放置することで痛みや不快感が悪化していきます。特に、口を開けるときの顎の痛みや耳の前あたりの圧迫感は次第に強くなり、開閉のたびに苦痛を伴うようになります。症状が進むと、開口障害によって口を十分に開けられなくなる場合も珍しくありません。
こうなると、硬い食べ物を噛むことが難しくなったり、人との会話すら不自由になったりすることもあります。軽い症状のときに治療やセルフケアを始めれば改善が期待できますが、悪化すると回復に時間がかかり、治療が長引くリスクもあるため注意が必要です。
噛み合わせが悪くなる
顎関節症を放置すると、顎の位置がずれて噛み合わせに悪影響を及ぼすことがあります。片方の顎に痛みがあると、無意識に痛くない側ばかりで噛むようになり、その習慣が積み重なることで歯列全体のバランスが崩れてしまうのです。
その結果、もともと噛み合わせが悪かった人はさらに悪化し、正しく噛めなくなるケースも見られます。噛み合わせの悪化は食事の効率低下や歯への負担増加につながり、むし歯や歯周病のリスクを高めることもあります。さらに噛み合わせの乱れは見た目にも影響する可能性があるため、なるべく早めに改善するのが望ましいでしょう。
全身症状に進行する可能性もある
顎関節症は、顎や口元だけでなく全身症状に進行する可能性もあります。顎のずれや噛み合わせの悪化が続くと、首や肩の筋肉に負担がかかり、肩こりや首こりを引き起こすことがあります。また、姿勢が崩れることで腰痛や背中の張り、手足のしびれなどが現れることもあるでしょう。
さらに、頭痛やめまい、耳の痛みや耳鳴りなど、日常生活に影響する症状に進行するケースもあります。こうした全身症状は精神的なストレスや疲労感を強め、生活の質を低下させる原因となります。そのため、顎関節症を単なる「顎の不調」と軽視せず、体全体に影響が及ぶ前に対処することが大切です。
顎関節症は自然治癒する?

顎関節症は、軽度であれば自然に症状が落ち着く場合もあります。例えば、筋肉の炎症が一時的に治まることで痛みが和らぎ、「治った」と感じる人も少なくありません。ただし、これは本当の意味で完治したわけではなく、顎の関節や筋肉に負担がかかる生活習慣を続けていると再び症状が現れる可能性があります。
つまり、自然に症状が軽くなることはあっても、根本的な原因が解決されなければ再発や慢性化のリスクは残るということです。顎関節症の「治癒」をどう定義するかによっても考え方は変わります。痛みや口の開けにくさといった不快な症状が消えて、日常生活に支障がなくなることを治癒と考えれば、十分に治る可能性はあります。
しかし、関節自体の構造に生じたダメージが完全に元に戻ることはないため、症状が和らいでも「完全に元通り」とは言い切れません。また、自然治癒を期待して放置してしまうと、症状が長引いたり悪化したりする場合もあります。そのため、症状が軽いうちに歯科や口腔外科を受診し、噛み合わせや生活習慣の指導を受けるなど、早期に適切な対策を取るのが理想的です。
自宅でできるセルフケア方法

顎関節症は、症状が軽い段階であれば自宅でのセルフケアによって改善が期待できることがあります。具体的なセルフケア方法は以下の通りです。
- 顎に負担のかかる食べ物を避ける
- 顎周辺の筋肉のマッサージをする
- 開口ストレッチをする
- 正しい姿勢を心がける
- 歯ぎしり・食いしばりを改善する
ここでは上記3つのセルフケア方法についてそれぞれ解説します。
顎に負担のかかる食べ物を避ける
硬いおせんべいやステーキなど、噛むのに力が必要な食べ物は顎に大きな負担をかけます。特に痛みが出ている時期はこうした食べ物を避け、スープやおかゆ、やわらかく煮た野菜などを選ぶとよいでしょう。また、大きな食材を無理にかじるのも負担になるため、一口サイズに小さく切って食べるのがおすすめです。さらに、左右どちらか一方だけで噛むのも顎のバランスを崩す原因になるため、できるだけ両方の歯でバランスよく噛むように心がけるとよいでしょう。
顎周辺の筋肉のマッサージをする
顎関節症による痛みは、顎を動かす筋肉の緊張が原因であることも多いため、マッサージで筋肉をほぐすのが有効です。こめかみのあたりにある側頭筋や、耳と頬の間にある咬筋に人差し指と中指を当て、円を描くようにゆっくりとほぐします。強く押しすぎると逆効果になるため、「痛気持ちいい」と感じる程度の力加減で行いましょう。
お風呂上がりや蒸しタオルで温めた後に行うと血流が良くなり、さらに効果が高まります。日常的に取り入れることで顎周辺の筋肉のこわばりが和らぎ、痛みや違和感の軽減につながります。
開口ストレッチをする
開口ストレッチは、顎関節の動きをスムーズにするのに効果的なセルフケア方法です。具体的な手順は以下の通りです。
- こめかみに手を添えて顎を右に動かす
- 顎を左に動かす
- 顎を前に突き出す
- 大きく口を開ける
上記10回繰り返すのを1セットとして、痛みが強すぎない範囲で1日5セット程度行うのが理想です。顎の筋肉や関節に適度な刺激を与えることで、開閉の動きがスムーズになり、口を開けやすくなります。ただし、無理に大きく開けようとするとかえって悪化する恐れがあるため、あくまで程よい負荷を意識することが大切です。
正しい姿勢を心がける
姿勢の乱れは顎関節症を悪化させる大きな要因です。猫背や前かがみの姿勢で長時間スマホやパソコンを使うと、下顎がずれて関節に負担がかかります。また、頬杖も頭の重さを片方の顎で支えることになり、大きな負担を与えます。日常生活では背筋を伸ばして顎を引くことを意識し、顎が正しい位置に保たれるようにしましょう。さらに寝るときはうつぶせ寝を避け、仰向けで寝るようにするのがおすすめです。
歯ぎしり・食いしばりを改善する
歯ぎしりや食いしばりは、顎関節に強い負担をかける習慣です。集中しているときやストレスを感じているときに無意識に食いしばってしまう人が多いため、日中は意識的に口元をリラックスさせましょう。また、就寝中の歯ぎしり対策には、歯科医院で作製してもらえるナイトガード(マウスピース)が有効です。マウスピースは市販のものもありますが、自分の口内にきちんとフィットするものを使用するのが望ましいため、歯科医院で作製することをおすすめします。
顎関節症の治療方法

顎関節症の主な治療方法は以下の4つです。
- スプリント療法
- 低周波治療
- 薬物療法
- 生活習慣の改善
ここでは上記4つの治療方法についてそれぞれ解説します。
スプリント療法
スプリント療法は、就寝時にマウスピースを装着して顎関節や筋肉にかかる負担を和らげる治療方法です。歯ぎしりや食いしばりを防ぐ効果があり、関節や筋肉の緊張を減らすことで痛みを軽減する効果が期待できます。
保険診療で受けられるのも特徴で、3割負担の方であれば数千円~1万円程度で治療が可能です。また、噛み合わせの調整や顎の動きを正しく導く役割もあるため、将来的に矯正治療を検討している人の準備段階としても活用されることもあります。
低周波治療
低周波治療は、電気刺激を使って筋肉の緊張を和らげ、血流を促進する治療方法です。顎関節症の痛みは筋肉のこわばりによって強くなることがあるため、低周波による刺激で筋肉をリラックスさせることで症状の改善が期待できます。痛みを伴わないため、痛みに弱い方でも安心して受けられます。
薬物療法
薬物療法では、主に痛みや炎症を抑える薬が使われます。よく用いられるのはロキソプロフェンやジクロフェナクなどの非ステロイド性抗炎症薬です。また、筋肉の緊張が強い人には筋弛緩薬、ストレスや精神的な要因が関係している場合には抗不安薬や抗うつ薬を組み合わせることもあります。これらの薬は顎関節症を根本的に治すものではありませんが、痛みを和らげて日常生活を送りやすくする役割を果たします。
生活習慣の改善
顎関節症の治療では、生活習慣の見直しも欠かせません。硬い食べ物を避ける、頬杖をやめる、姿勢を正すといった工夫で顎関節への負担を減らせます。また、肩や首のストレッチ、軽い運動を取り入れて全身の筋肉をほぐすのも有効です。セルフケアと治療を並行して行うことでより高い改善効果が期待でき、再発防止にもつながります。
まとめ
顎関節症は自然治癒で一時的に症状が落ち着くこともありますが、根本的な原因が改善されなければ再発や悪化のリスクが残ります。放置すると顎の痛みや口の開けにくさが強くなり、噛み合わせや姿勢の歪みにまで影響することもあります。さらに、肩こりや頭痛、めまいなど全身にまで症状が広がるケースもあるため、決して軽視できるものではありません。違和感が続く場合は早めに医療機関を受診し、適切な治療や生活習慣の改善を行うことが大切です。
親知らず・顎関節症クリニック銀座では、顎関節症の治療に対応しています。保険適用のスプリント療法、自由診療でのボツリヌストキシン(ボトックス)注射、さらに生活習慣改善のアドバイスなども行っているため、顎関節症の症状でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。
監修歯科医師
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医療法人社団GRIT 理事長
〔院長略歴〕
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会 
