Blogブログ

痛くない親知らずを抜くケースはある?抜かないリスクについても解説

2025年12月23日

抜歯された親知らず

親知らずは「痛みがなければ放置しても大丈夫」と考える方が多いですが、必ずしもそうとは限りません。実際には自覚症状がなくても、親知らずが隣の歯を圧迫していたり、歯茎や骨の中で嚢胞(のうほう)を作っていたりすることがあります。こうしたケースでは、将来的に大きなトラブルを防ぐために抜歯を勧められることもあるのです。

この記事では、「痛くないけど抜いた方がよい親知らず」について詳しく解説します。親知らずを抜く基準や抜かないリスク、よくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

親知らずとは

歯の模型の親知らずのあたりを指さしている

親知らずとは、一番後方に位置する歯で、正式には『第三大臼歯』と呼ばれます。中切歯(前歯)から数えて8番目にあたり、永久歯の中でも最後に発育する歯です。通常の永久歯は12~13歳前後で生え揃いますが、親知らずは10代後半から20代前半にかけて生えてくるのが一般的です。この時期はすでに親の手を離れて生活している人も多いため、親に気づかれず生えてくることから『親知らず』という名前がついたともいわれています。

なお、すべての人に必ず親知らずがあるわけではなく、もともと存在しない場合や、4本揃わない場合も珍しくありません。また、顎の大きさや歯の生えるスペースが関係し、真っ直ぐ生えずに傾いたり、歯茎に埋まったままの状態になることもあります。このため、親知らずは他の歯に比べてトラブルが起こりやすく、歯磨きがしにくいため虫歯や歯周炎の原因になることが多いとされています。

親知らずは上顎と下顎の一番奥にある歯

親知らずは、上顎と下顎の一番奥にある歯です。他の奥歯と比べてさらに奥にあるため、歯ブラシが届きにくいのが大きな特徴です。口の奥に位置することから、磨き残しが出やすく、周囲に汚れや歯垢が溜まりやすい環境になります。その結果、親知らず自体が虫歯になるだけでなく、隣接する奥歯までも虫歯や歯周病になりやすくなる点に注意が必要です。

また、親知らずは正常に生えれば問題ありませんが、顎が小さい現代人では生えるスペースが不足することが多く、斜めに傾いたり半分だけ出てきたりすることもあります。こうした場合には、痛みや腫れ、噛み合わせ不良などにつながることがあり、歯科医院での経過観察や抜歯の検討が行われます。

親知らずの生え方は3種類ある

親知らずの生え方は大きく分けて3種類あります。

  • 真っ直ぐ生えているタイプ
  • 斜めに生えているタイプ
  • 歯茎の中に埋まっているタイプ

これらの生え方は顎の大きさや歯の位置関係によって異なり、すべての人に同じように生えるわけではありません。日本人では特に斜めに生えているタイプや埋まっているタイプが多いとされます。状態によっては特に処置をしなくてもよい場合もありますが、炎症や虫歯のリスクが高い場合は抜歯を勧められることがあります。

真っ直ぐ生えているタイプ

親知らずが真っ直ぐに生えている場合、他の奥歯と同じように噛み合わせが機能し、特に大きな問題を起こさないことも多いです。ただし、一番奥にあるため歯ブラシが届きにくく、磨き残しが出やすい点には注意が必要です。その結果、親知らずだけでなく隣接する奥歯まで虫歯や歯周病のリスクが高まります。真っ直ぐに生えていても、歯磨きの習慣が不十分だとトラブルにつながりやすいため、意識的に磨くことが大切です。

斜めに生えているタイプ

斜めに生えている親知らずは、日本人に特に多いとされるタイプです。このタイプは歯磨きが非常に難しく、汚れが溜まりやすいため、虫歯や歯茎の炎症を引き起こすリスクが高いといわれています。また、斜めに生えることで隣の歯を圧迫し、歯並びを乱してしまうこともあるため注意が必要です。場合によっては口が開きにくくなり、治療自体も困難になることがあります。

歯茎の中に埋まっているタイプ

歯茎の中に埋まっているタイプは、外からは歯が見えず、自覚症状がほとんどないまま過ごすこともあります。ただし、稀に嚢胞(のうほう)と呼ばれる袋ができて骨を圧迫したり、違和感や痛みが生じたりすることがあります。見えていないからといって必ず安心できるわけではないため、レントゲンで確認しておくことが大切です。周囲に影響がない場合は経過観察で問題ありませんが、痛みや炎症、隣の歯に悪影響がある場合には抜歯が検討されます。

親知らずを抜く基準

抜かれた親知らずと治療に使用する器具

親知らずは必ず抜かなくてはいけない歯ではありませんが、状況によっては抜歯を検討する必要があります。ここでは抜いた方がよいケースと抜かなくてもよいケースについてそれぞれ解説します。

親知らずを抜いた方がよいケース

親知らずを抜いた方が良いのは、痛みや腫れといった症状がある場合だけではありません。具体的には以下のようなケースは抜歯が検討されることが多いです。

  • 親知らずが虫歯や歯周病になっている
  • 親知らずが歯並びや噛み合わせを悪化させている
  • 親知らずの周りに嚢胞ができている
  • 顎に痛みや腫れが生じている

抜歯を行うかどうかは歯の状態や患者さんの体調、生活への影響などを総合的に判断して決められるため、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。

親知らずが虫歯や歯周病になっている

親知らずは一番奥にあるため歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすいです。その結果、他の歯に比べて虫歯や歯周病を起こしやすい傾向があります。特に斜めや横に生えている場合は隣の歯との間に汚れが溜まり、親知らずだけでなく隣の健康な歯まで虫歯になることがあります。軽度であれば治療して保存できる場合もありますが、重度に進行している場合は抜歯が選択されることが多いです。

親知らずが歯並びや噛み合わせを悪化させている

親知らずが十分なスペースのないところに生えてくると、手前の歯を強く押してしまうことがあります。この圧力によって前歯や奥歯が少しずつ動き、歯並びが乱れてしまうことがあるのです。また、上下の親知らずの片方しか生えていない場合には、噛み合う歯がないため、歯茎や頬の粘膜を刺激して傷をつくることもあります。

さらに、噛み合わせのバランスが崩れることで顎の関節に負担がかかり、顎関節症の一因になることもあります。見た目の問題だけでなく、噛む機能にも影響が出るため、歯並びや噛み合わせに悪影響があると判断された場合は抜歯を検討するのが望ましいでしょう。

親知らずの周りに嚢胞ができている

歯茎や骨の中に埋まった親知らずは、症状がなくてもレントゲンを撮ると嚢胞ができていることがあります。この嚢胞は放置すると徐々に大きくなり、骨を圧迫したり、周囲の歯を動かしたりする原因になることがあるため注意が必要です。

また、炎症を伴うと痛みや腫れを引き起こすこともあり、進行すれば外科的な処置が必要になるケースもあります。自覚症状がなくても、検査で嚢胞が確認された場合には、抜歯を行うことがトラブルの予防につながります。

顎に痛みや腫れが生じている

親知らずの周囲は汚れが溜まりやすいため、細菌感染によって炎症が起こりやすいです。その結果、歯茎が腫れたり顎に痛みが出たりすることがあります。炎症が進むと口が開けにくくなったり、発熱を伴ったりする場合もあります。このように生活に支障が出るほどの症状がある場合には、対症療法ではなく抜歯が根本的な解決方法となることが多いです。

親知らずを抜かなくてもよいケース

親知らずを抜かなくてもよいケースは、大きく分けて『問題なく綺麗に生えている場合』と『完全に埋まっていて症状がない場合』の2つがあります。これらの親知らずは日常生活や口腔内の健康に悪影響を与える可能性が低いため、抜かずに経過観察することが多いです。

綺麗に生えていて歯並びや噛み合わせに問題がない

親知らずが真っ直ぐに生え、上下の歯と正しく噛み合っている場合は、特に抜歯の必要はありません。しっかり噛む機能を果たしていれば他の奥歯と同じように利用できます。

さらに、将来的に別の奥歯を虫歯や歯周病で失った場合、状態の良い親知らずを移植して補う治療に活用できる可能性もあります。ただし虫歯や歯周病のリスクはゼロではないため、残す場合は丁寧なケアを続けることが大切です。定期的に歯科検診を受けて、問題が起きていないか確認しておくと安心でしょう。

親知らずが完全に埋まっている

親知らずが完全に埋まっていて痛みや腫れなどの症状が出ていない場合も、基本的には抜歯の必要はありません。このような状態は、自覚症状がなければ一生そのままでも問題が起こらないことも多いです。ただし、稀に嚢胞ができたり、将来的に隣の歯へ影響を与えたりする可能性があるため、定期的なレントゲン検査で経過を観察しておくことが大切です。症状がなければ無理に抜く必要はなく、むしろ抜歯による負担を避けられるメリットもあります。

親知らずは痛くないけど抜くこともある

抜かれた親知らずと治療に使用する器具

親知らずは症状がなくても抜歯を勧められるケースがあります。例えば、歯茎や骨の中に完全に埋まっている親知らずは、自覚症状がないまま嚢胞と呼ばれる袋状の病変を作ることがあります。これが大きくなると骨を圧迫したり、隣の歯に悪影響を与えたりする恐れがあるため注意が必要です。

また斜めや横向きに生えている親知らずは、痛みを伴わなくても、手前の歯を押して歯並びを乱す原因になることがあります。こうした場合、将来的なトラブルを防ぐ目的で抜歯が選択されることがあります。

親知らずを抜かないリスク

頬を手で押さえている口元 押さえている箇所が赤くハイライトされている

親知らずを抜かないリスクとして、以下の3つが挙げられます。

  • 痛みや腫れが出てくる
  • 歯並びが悪化する
  • 隣の歯に虫歯や歯周病が感染する

ここでは上記3つのリスクについてそれぞれ解説します。

痛みや腫れが出てくる

親知らずは歯ブラシが届きにくいため、汚れが溜まりやすく虫歯や歯周病のリスクが高い歯です。その結果、細菌感染を起こして歯茎が腫れたり、顎全体に痛みが広がったりすることがあります。特に親知らずの周りで起こる炎症は、一度落ち着いても再発を繰り返しやすく、食事や会話に支障をきたすことも少なくありません。

さらに症状が悪化すると口が開けにくくなったり、発熱を伴うこともあります。これらの症状は放置して自然に治ることは少なく、多くの場合は抜歯によって根本的な改善を図ります。痛みがない時期でも炎症が潜んでいることがあるため、早めに診察を受けて状況を確認することが大切です。

歯並びが悪化する

親知らずが十分なスペースのない場所に生えてくると、手前の歯を押して動かしてしまうことがあります。その結果、少しずつ歯並びが乱れ、見た目の問題だけでなく噛み合わせにも影響を及ぼすことがあるのです。特に前歯の歯並びが崩れると、発音や咀嚼にも支障が出ることがあります。

さらに、歯並びの乱れは歯磨きのしにくさにつながり、虫歯や歯周病のリスクを高める悪循環を生むことになります。矯正治療を受けて綺麗に整えた歯並びでも、親知らずの圧力によって再び乱れてしまうことがあるため注意が必要です。

隣の歯に虫歯や歯周病が感染する

親知らずを抜かない場合に考えられる特に大きなリスクの一つが、隣の歯への悪影響です。親知らずとその手前の第二大臼歯の間は特に汚れが溜まりやすく、歯ブラシやフロスが届きにくいため、虫歯や歯周病が進行しやすい環境にあります。親知らずが虫歯になっただけならまだしも、隣の歯にまで感染すると、健康な歯を失う原因になりかねません。

第二大臼歯は日常生活で大きな役割を果たす大切な歯であり、「人生100年時代」において長く使い続けたい歯の一つです。そのため、隣の歯を守る目的で親知らずを抜歯するケースも少なくありません。

親知らずの抜歯に関するよくある質問


親知らずの抜歯に関するよくある質問をまとめました。

  • 親知らずを抜くと小顔になる?
  • 親知らずを抜くときの痛みや腫れはある?
  • 親知らずを抜くときの注意点は?

ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。

親知らずを抜くと小顔になる?

劇的に顔の大きさが変わるわけではありませんが、親知らずの抜歯によってフェイスラインがすっきり見えることはあります。下の親知らずはエラに近い位置にあるため、抜歯によってその部分の骨が吸収し、わずかにほっそりと見える場合があります。また、噛むことで使っていた顎の筋肉が弱まり、筋肉の張りが軽減されることも理由の一つです。

さらに、親知らずが原因で歯ぎしりや食いしばりをしていた方は、それらが改善することで顎周りの筋肉がリラックスし、顔の印象が変わることがあります。ただしこれはあくまで副次的な効果であり、美容目的で抜歯をするのは推奨されません。医師と相談し、医学的に必要な場合に行うのが望ましいでしょう。

親知らずを抜くときの痛みや腫れはある?

抜歯自体は局所麻酔を使用するため、処置中に強い痛みを感じることはほとんどありません。不安が強い方には静脈内鎮静法という方法が用いられることもあり、ウトウトしている間に治療が終わるケースもあります。ただし、麻酔が切れた後には痛みを感じやすく、2〜3日程度は痛み止めを使用するのが一般的です。

腫れは2〜3日をピークに徐々に引いていき、1週間前後で落ち着く方が多いです。抜歯の難易度や親知らずの生え方によって経過は変わりますが、事前に医師から説明を受け、処方された薬をしっかり服用すれば大きな心配はありません。

親知らずを抜くときの注意点は?

親知らずを抜いた後の注意点は以下の通りです。

  • 血行が促進される行動(激しい運動・長時間の入浴・アルコール摂取など)は控える
  • 食事は抜歯した歯の反対側で噛むようにする
  • 刺激物や硬いものは控える
  • 処方された抗生剤や痛み止め歯指示通りに服用する

これらを守ることで回復をスムーズに進められます。違和感が続く場合は自己判断せず、必ず歯科医院に相談しましょう。

まとめ

親知らずは必ずしも抜かなくてはいけない歯ではなく、綺麗に生えていて噛み合わせに問題がない場合や完全に埋まっている場合は経過観察でよいこともあります。しかし、痛みがなくても隣の歯に悪影響を与えていたり、嚢胞を作っていたりする場合は、予防的な抜歯が必要になることがあります。抜くべきかどうかは自己判断が難しいため、レントゲンなどの検査を行ったうえで歯科医師による総合的な判断が必要です。違和感や不安がある場合は放置せず、なるべく早めに歯科医院で相談しましょう。

親知らず・顎関節症クリニック銀座では、親知らずの抜歯に対応しています。骨や歯茎の中に埋まっている親知らずの抜歯も可能なため、不安がある方はぜひ当院までご相談ください。

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会