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顎関節症の原因は?発症の仕組みやなりやすい人、予防法などを解説

2025年12月16日

顎と歯を写したレントゲン画像と歯の模型

顎関節症は、顎の痛みや開口時の不具合を伴う疾患で、さまざまな要素が原因で発症する可能性があります。癖や習慣が無意識のうちに顎関節症のリスクを高めている恐れがあるため、原因を理解して予防や早期治療に努めることが大切です。この記事では、顎関節症の原因やなりやすい人の特徴、受診の目安などを紹介します。

顎関節症はどんな病気?

顎の部分が赤くハイライトされた口元のイラスト

顎関節症は、顎の痛みや開口障害、異音などの症状がみられる疾患です。問題が発生している部位や顎関節の状態によって、以下の4種類に分けられます。

Ⅰ型
  • 咀嚼筋の緊張や筋肉炎によって生じる。
  • 頬・こめかみに痛みが現れ、頭・肩・首が痛むケースもある。
Ⅱ型
  • 顎関節の繊維組織が捻挫を起こしている状態。
  • 耳の穴の前方に位置する顎関節に痛みが生じる。
Ⅲ型
  • 関節円板のズレによって生じる。
  • 開口時に異音を伴い、悪化すると開口障害が出現する恐れがある。
Ⅳ型
  • 関節軟骨がすり減り、顎骨が変形した状態。
  • 痛み・異音の両方を伴い、変形した骨を治すことは難しい。

種類によって症状が異なりますが、いずれの場合も無理に口を開けたり放置したりすることで悪化する恐れがあります。軽度の顎関節症の場合、症状が軽く受診が必要ないと感じるケースや、何らかのきっかけでたまたま治るケースもありますが、原因となる癖や習慣が改善されなければ再発する可能性があります。当てはまる症状がある場合は、無理にはめたり、口を開けたりせず、早めに医療機関を受診してください。

顎関節症の原因

前歯を見せている口元

顎関節症は、主に以下7つの原因によって引き起こされます。

  • 歯並び・噛み合わせ
  • TCH(歯列接触癖)
  • 歯ぎしり・食いしばり
  • 習慣
  • 姿勢
  • 外傷

それぞれの原因について詳しく解説します。

歯並び・噛み合わせ

歯並びや噛み合わせの乱れは、顎関節症の原因のひとつです。主に以下のような不正咬合は、顎関節症の典型的な例とされています。

開咬(オープンバイト)
咬合の際に上下の前歯が離れている
反対咬合(下顎前突・受け口)
下の歯が上の歯よりも前に出ている
交叉咬合(クロスバイト)
上下の噛み合わせの前後が位置によって異なる

上下の歯が正常に噛み合った状態では、咀嚼の際に顎にかかる力が分散されるため、特に負担をかける行為をしない限りは顎関節や周辺の筋肉に過剰な負荷がかからない仕組みになっています。しかし、歯並びや噛み合わせが乱れていると、一点に力が集中したり、不適切な方向に圧力がかかったりする恐れがあります。

TCH(歯列接触癖)

TCHは歯列接触癖のことで、何もしていない時でも上下の歯がぶつかり合っている癖を指します。人の歯は、会話や食事の時以外は接触していないのが正常な状態ですが、TCHがある方は、普段から上下の歯が噛み合った状態になっています。顎に持続的に力がかかるため、顎関節症のよくある原因のひとつとされていますが、意識することで改善が可能です。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎に負担をかけて顎関節症を引き起こす場合があります。これらの口腔習慣のことをブラキシズムといい、睡眠時に限らず覚醒時にも無意識に起こるケースがあります。特に仕事・勉強・家事・運転など、なにかに集中している時は歯を擦り合わせたり、強く食いしばったりしやすい傾向があるため注意が必要です。

顎関節症は、以下のような顎に負担がかかる癖があるとリスクが高まります。

  • 頬杖をつく
  • 指や爪を噛む
  • 食べ物を頬の片側だけで咀嚼する
  • 通話の際、スマートフォンを顎と肩で挟む
  • 舌で前歯を押す

顎に負担をかける癖に加えて、歯並びを悪くする癖も間接的に顎関節症の原因になる場合があります。これらの癖は、意識してやめるようにするほかに、トレーニングによって改善が目指せます。

習慣

以下のような顎に負担をかける習慣は、顎関節症のリスク要因になります。

  • 寝転がってテレビをみたり、スマートフォンをいじったりする
  • 長時間同じ姿勢でいることが多い
  • 睡眠時にうつ伏せで寝ている
  • 硬いものを食べることが多い
  • ガムをよく食べる

かかる力が弱くても、日常的に圧力がかかることで少しずつ負担が蓄積されていきます。無意識で行う癖とは異なり、習慣は意識して改善しやすいため、顎関節症につながる習慣がある方は、気を付けたり控えたりする工夫が大切です。

姿勢

以下のように、顎関節症を引き起こしやすい姿勢でいることが多い方は注意が必要です。

  • 猫背
  • 前傾姿勢
  • うつむき姿勢

猫背では頭が前に出て、その重さを支えるために顎に負担がかかります。一方で、前傾姿勢では顎が前に突き出されるかたちになるため、本来の位置よりも前方に顎がズレることで顎関節症のリスクが高まります。

またうつむき姿勢は、首の骨が正常な状態であるS字カーブから真っ直ぐになるストレートネックによって顎や口周りの筋肉の緊張を引き起こし、顎関節症につながる恐れがあります。姿勢が悪い方は、習慣と同様に気付いた際に姿勢を正すように意識しましょう。

外傷

外傷によって顎に力が加わると、顎関節症になる可能性があります。転倒・スポーツ・交通事故などによる顎関節への衝撃が原因で、顎関節に炎症が起こったりズレや損傷に繋がったりすることで、痛みや開口障害などの症状が現れるケースがあります。歯並びに問題がなく、原因となる癖や習慣がない方が顎関節症を発症した場合は、過去の事故による後遺症の可能性もあるでしょう。

顎関節症になりやすい人

バイオリン奏者の後ろ姿

以下に当てはまる方は、顎関節症になりやすい可能性があります。

  • 女性
  • 硬い食べ物を頻繁に食べる
  • ストレスを感じやすい
  • スマートフォンやパソコンを日常的に操作する
  • 歯や顎に負担がかかる職業をしている

それぞれの特徴について詳しく解説します。

女性

顎関節症は、男性よりも女性の方が発症リスクが高いとされています。これは、女性は男性と比較して筋肉量が少なく、咀嚼に必要な筋肉が負荷を感じやすいためです。また、女性はホルモンバランスの影響でストレスに敏感な傾向があるため、顎関節症の原因となる歯ぎしりや食いしばりが起こりやすいとされています。

硬い食べ物を頻繁に食べる

硬い食べ物を日常的に食べる方は、歯や顎に負担がかかり顎関節症になるリスクが高まります。よく噛むことは顎の健康を保つために必要ですが、硬い食べ物(せんべい・するめ・フランスパンなど)を食べすぎることは逆効果です。顎関節症だけではなく、歯の欠けやヒビなどのトラブルも発生しやすくなるため、噛む強さよりも咀嚼の回数を意識するようにしましょう。

ストレスを感じやすい

ストレスが多い方は、歯ぎしりや食いしばりによる顎関節症を引き起こしやすいとされています。精神的なストレスや不安・緊張を感じやすい方は、無意識のうちに歯を擦り合わせたり、食いしばったりする癖がつきやすくなります。ストレスを緩和することで、顎関節症の原因であるブラキシズムも改善される可能性があるでしょう。

スマートフォンやパソコンを日常的に操作する

スマートフォンやパソコンを日常的に操作する方は、姿勢が悪くなりがちなため顎関節症のリスクが高まります。特にデスクワークをする方は、就業中にパソコンに向き合い、帰宅後はスマートフォンを長時間使用するなどの生活をしていると、顎関節のズレにつながる恐れがあります。また、デスクワークでは猫背や前傾姿勢と頬杖が同時に起こっている状態になるケースも多いため、注意が必要です。

歯や顎に負担がかかる職業をしている

歯や顎に負担がかかる楽器奏者の方や、物理的な負荷がかかりやすいスポーツをしている方などは、顎関節症になりやすいとされています。

  • バイオリン・ヴィオラ奏者
  • 吹奏楽団(管楽器奏者)
  • ラグビー・ボクシング・柔道などの選手

バイオリンやヴィオラなどの弦楽器を演奏する方は、肩と顎で楽器を支えるため、顎の一部にストレスがかかり、筋肉が偏って発達したり、顎が変形したりするリスクがあります。またマウスピース(楽器に息を吹き込むための部品)を使用する管楽器や、リードを使用するサックスなどの楽器を演奏する部活動・吹奏楽団に所属する方は、演奏時に口・顎周りの筋肉に負荷がかかりやすいとされています。

さらに、ラグビー・ボクシング・柔道などのコンタクトスポーツは、顎に強い衝撃が加わるリスクが高いです。関節円板がズレたり、顎関節の靱帯が伸びたりする恐れがあり、衝撃を受けた後に症状がある場合は、慢性化しないように早めに対処する必要があります。

顎関節症の症状

顎を手で抑えている様子

顎関節症では、以下の症状がみられます。

  • 顎から音がする(カク・ポキ・コキ・ミシ・ジャリなど)
  • 顎や周囲の筋肉に痛みや違和感がある
  • 口の開閉がしづらい
  • 食事や長時間の会話の後に顎に疲労感がある
  • 顎が外れる
  • 耳や側頭部に痛み・不快感がある
  • 首・肩のこりがある
  • 頭痛・めまい・耳鳴りがある

顎関節症では、顎関節や筋肉の不具合に加えて身体症状も見られるケースがあります。頭痛やめまいが生じることで、神経内科や耳鼻咽喉科の受診を検討する方もいると思いますが、顎関節症の治療は口腔外科で行われることが一般的です。顎の痛みがある場合、虫歯や歯周病が進行している可能性も考えられるため、何科を受診すればよいか分からない方はかかりつけの歯科に相談しましょう。

顎関節症で医療機関を受診する目安

歯科医院でレントゲン画像を見ながら説明を受ける様子

顎関節症で医療機関にかかるタイミングが難しい場合は、以下の目安を参考にしてください。

症状セルフチェック

顎関節症の症状セルフチェックシートです。1つでも当てはまる場合は、顎関節症の可能性があります。

  • 口の開閉時に異音がする
  • 口の開閉時に痛みがある
  • 口の開け閉めが上手くできない
  • 口を開けた際に上下の顎がズレている
  • 硬いものを食べようとすると顎に痛みが生じる
  • 咀嚼や長時間の会話で顎の疲れやすさを感じる
  • 噛み合わせが変わった感覚がある

1つでも顎関節症の症状がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

悪化する前に対処することが大切です。

生活習慣セルフチェック

顎関節症になりやすい生活習慣セルフチェックです。当てはまる癖や習慣がある方は、顎関節症になりやすい状態にあります。

  • 歯ぎしりや食いしばりを他人に指摘されたことがある
  • 頬の片側で咀嚼をする癖がある
  • 指・爪や唇を噛む癖がある
  • 起きていても歯を食いしばっていることがある
  • 睡眠時にうつ伏せになることが多い
  • 気が付くと頬杖をついている
  • 猫背だと言われることが多い
  • パソコンを日常的に使用する
  • 硬い食べ物を強く噛むのが好き

これらの習慣がある方は顎関節症になりやすい状態であるため、現時点で不具合が起こっていなくても注意する必要があります。顎関節症の原因はさまざまですが、複数の要因が作用すると発症のリスクが高まるため、当てはまる生活習慣が多い方は要注意です。習慣や癖を自分で改善するのが難しい場合は、医療機関で専門家の対応を受けましょう。

口がどれくらい開くかのチェック

顎関節症のセルフチェックでは、痛みを感じない範囲で口を大きく開け、人差し指・中指・薬指の3本が縦に入るかを確認します。指が入るだけの口が開かない場合や、開けた際に顎が左右にズレている場合は顎関節症の可能性があります。痛みや開けづらさがある場合は、無理に開けないよう注意しましょう。

顎関節症になった場合に自分でできる対処法

両顎の付け根を両手で押さえている口元

顎関節症になった場合は、症状が悪化しないように対処し、早めに医療機関を受診しましょう。受診までに自分でできる対処には、以下の方法があります。

  • 食べ物は柔らかく、小さくする
  • あくびの際は口が開きすぎないようにする
  • 必要に応じて歯科治療を中断する
  • 筋肉をマッサージする
  • 患部を温める・冷やすなどして対応する

顎関節症の症状がある場合は、医療機関を受診するまで顎に負担がかかる行為や口を大きく開ける行為を避ける必要があります。症状がある状態で硬い食べ物を食べたり、大きく口を開けて食事をしたりする行為は禁止です。歯科治療は口を開けている時間が長いため、可能であれば延期しましょう。

頬やこめかみの筋肉を円を描くように優しくほぐすマッサージが効果的なケースもありますが、症状が悪化しないように自己判断で行う際は注意が必要です。顎関節症では、痛みが強い場合は冷やし、筋肉が緊張している場合は温める方法が応急処置として有効なケースがありますが、いずれの場合も放置せず早めに医療機関を受診してください。

顎関節症の予防法

PC作業をする女性

顎関節症の予防のためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • うつ伏せ寝をしないように意識する
  • デスクワークの際は姿勢を正し、時々ストレッチをして体を休ませる
  • 硬いものの咀嚼はほどほどにする
  • 頬杖は気付いたらやめる
  • ブラキシズムは早い段階で治療する
  • 食事の際は両方の頬で咀嚼する
  • スポーツや楽器演奏をする方は医師に相談する

顎関節症は無意識の行動や習慣が原因となることが多いため、原因となり得る特徴を理解し、当てはまる場合は早めに対処することが大切です。頬杖・姿勢・TCHを改善する場合は、目に見えるところに「頬杖をやめる」「姿勢を正す」「歯を離す」などのメモを張ることで自然な改善が目指せます。また姿勢を正したい、頬杖をやめたい場合は、椅子に深く腰掛け、パソコンの画面を少し高めに設置するのが効果的です。

睡眠時のブラキシズムは意識してやめることが難しいため、医療機関で専門的な治療を受けましょう。スポーツや楽器演奏をする方は、長く続けられるように予防法を医師に相談することをおすすめします。

まとめ

顎関節症ではさまざまな原因が考えられますが、複数の要素が絡み合うと発症のリスクが高まります。原因となる癖や習慣などを理解し、予防・早期治療に努めることが大切です。

親知らず・顎関節症クリニック銀座(オヤアゴ銀座)では、スプリント療法やボツリヌストキシン注射などを用いて、患者様一人ひとりに合わせた顎関節症治療をご提案いたします。丁寧で患者様に寄り添った診断に加え、顎関節症を改善するための生活習慣指導も行っております。顎が痛い・音がする・口が開けづらいなどの症状がある方は、放置せずお早めにご相談ください。

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会