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【下歯槽神経麻痺が起きてしまったら】― 親知らず抜歯後に知っておきたい神経のこと ―

2025年10月9日

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある【親知らず・顎関節症クリニック銀座】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

下顎の親知らず抜歯と神経の位置関係
下顎の親知らず(下顎第三大臼歯)は、顎の中を走る下歯槽神経(inferior alveolar nerve)に非常に近い位置にあります。
この神経は、下唇やオトガイ(あご先)・歯茎の感覚を司る重要な神経です。
そのため、埋伏した親知らずを抜歯する際に、下歯槽神経麻痺が起こるリスクがあります。

麻痺が起きたときに見られる症状
麻痺が出た場合、次のような症状が現れます。
* 下唇やあご先のしびれ・感覚低下
* 一部の皮膚に鈍い・冷たい・触っても感覚が乏しいといった違和感
* 稀に、痛みや灼熱感(しびれ痛)を伴うこともあります
これらは運動麻痺ではなく「感覚神経麻痺」です。
そのため顔の形や口の動きが歪むことはありません。
ここが顔面神経麻痺との大きな違いです。(そもそも神経自体異なる)

発生の原因とリスク
下歯槽神経麻痺の発生率は報告により異なりますが、
一般的に0.5〜1.0%程度とされています(日本口腔外科学会誌などによる報告)。
主な原因は以下の通りです:
* 歯根が神経管(下顎管)と接触、または交差していた場合
* 骨の切削・圧迫・器具の振動による微細損傷
* 術後の腫れや出血による二次的圧迫

麻痺が出てしまった場合の治療と経過
下歯槽神経麻痺が発生した際には、できるだけ早期に対応を開始することが重要です。
一般的な治療法
* ビタミンB12製剤(メコバラミンなど)の内服
 → 末梢神経の再生を促す目的で使用されます。
* ステロイドの短期投与
 → 炎症や浮腫による神経圧迫の軽減を狙います。
* 神経賦活薬(アデホス、ATP製剤など)
 → 神経代謝の改善を目的に併用することもあります。

経過と予後
多くの症例では、数週間〜3ヶ月程度で徐々に感覚が回復していきます。
しかし、6ヶ月を超えても改善が見られない場合、症状が固定化する可能性が高くなります。
このため、術後の経過観察を丁寧に行い、経時的な回復状況を確認していくことが大切です。

オヤアゴクリニックでのリスク回避への取り組み
当院では、下顎埋伏智歯(親知らず)の抜歯前に、全例CT撮影を行い、神経の走行を三次元的に確認しています。
CTによって神経との距離や位置関係を詳細に把握することで、
「どの方向からアプローチするか」「分割抜歯が必要か」など、術式を慎重に計画します。
ただし、CTを撮影したからといって麻痺が絶対に起きないわけではありません。
あくまで「リスクの可視化」であり、麻痺をゼロにするものではないという点を患者さまにも丁寧に説明しています。

まとめ ― 麻痺を恐れすぎず、正しい情報を知ること
下歯槽神経麻痺は、確かに親知らず抜歯における最大のリスクです。
しかし、術前のCT診断と適切な術式選択、そして発生時の早期対応により、
多くの場合は回復が見込める合併症でもあります。
オヤアゴクリニックでは、抜歯前にしっかりとリスク説明を行い、
術後も経過を丁寧にフォローする体制を整えています。



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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会)
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会