寝ているあいだ、あごは戦っている？

2025年10月8日

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある【親知らず・顎関節症クリニック銀座】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

——顎関節症と“眠りの質”のほんとうの関係

朝、こめかみが重い・あごがだるい
それ、眠っている間の食いしばりのサインかもしれません。
今日は日本顎関節学会などのガイドラインに沿って、顎関節症と睡眠の関係をわかりやすく解説します。

1. 「睡眠時ブラキシズム」って？
睡眠中にあごの筋肉が強く動く状態をいいます。
専門的にはRMMA（律動性咀嚼筋活動）と呼ばれ、
1時間に4回を超えると「歯ぎしり・食いしばりあり」と判定されます（Journal of Oral and Sleep Medicine）。

2. どうして顎関節症が悪化するの？
浅い眠り（レム睡眠）のときは、体がストレスの影響を受けやすく、
咬筋・側頭筋が働きやすい状態になります。
その積み重ねが、
筋肉のこわばり → 関節への負担 → 痛み・口が開きにくい
といった顎関節症状を引き起こします。
日本顎関節学会の報告では、睡眠中の過剰な咬筋活動は咀嚼筋の疼痛・疲労のリスク因子とされています。

3. 何をすればいい？
日本顎関節学会の「顎関節症初期治療診療ガイドライン（2023改訂）」では、
次の２つを初期治療として推奨しています（いずれも副作用が少ない保存的療法です）。
* スタビリゼーション型スプリント（上顎用）
* 自己開口訓練（セルフストレッチ）
これらを3か月ほど継続し、改善が見られない場合は専門医の受診が推奨されています。
（※ガイドライン上の推奨度は「弱い推奨（確実性：非常に低）」）

4. スプリントだけで足りない？——睡眠環境も治療の一部です
* 寝る前60分はスマホやパソコンを閉じる（ブルーライト抑制）
* カフェイン・アルコールを控える
* 枕や寝姿勢を見直す（片側だけに負担をかけない）
* 必要に応じて筋肉の過緊張に対する治療（理学療法・ボトックスなど）を併用
ナイトガードは「歯や関節を守る」ための装置。
ですが、食いしばる原因を減らす＝良い眠りを整えることも、治療のもう一つの柱です。

5. 当院の方針
1️⃣ 病態分類と鑑別
2️⃣ 保存的治療を第一選択
3️⃣ 3か月で再評価
4️⃣ 必要に応じて専門治療へ
過度な咬合調整は急がず、安全性の高い段階的アプローチを基本としています。
「夜ぐっすり眠ること」が、あごの健康を守る第一歩です。

📚 参考・出典
* 日本顎関節学会『顎関節症初期治療診療ガイドライン（2023改訂版）』
　→ 初期治療として「スプリント＋自己開口訓練」を弱い推奨。
* 日本顎関節学会『顎関節症治療の指針（2020）』
　→ 保存的・可逆的治療を基本とする立場。
* Journal of Oral and Sleep Medicine
　→ RMMA（律動性咀嚼筋活動）4回/時以上をブラキシズムの基準とする。
* 日本顎関節学会誌レビュー（2021）
　→ 睡眠時の咬筋活動は顎関節症や筋痛のリスクファクターとなる可能性を指摘。

オヤアゴ院長ブログ
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