抜歯後の抗生剤が「1日分だけ」なのはなぜ?
目次
こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・ 親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

親知らずの抜歯後に、
「抗生剤が1日分しか出ていないのですが、大丈夫ですか?」
と聞かれることがあります。
以前は抜歯後に3日分、場合によっては5日分程度の抗生剤が処方されることも珍しくありませんでした。
しかし現在は、抗生剤は必要な場合に、必要な期間だけ使用するという考え方が基本になっています。
抜歯したからといって、必ず感染するわけではありません
まず大切なのは、
「抜歯をしたこと」と「感染していること」は別である
ということです。
抜歯は外科処置ですので、当然多少の腫れや痛みは生じます。
しかし、
* 抜歯後に腫れている
* 傷口が痛い
* 血がにじむ
といったこと自体は、必ずしも感染を意味しません。
手術による正常な炎症反応として起こることも多くあります。
そのため、感染が認められない患者さんに対して抗生剤を長期間飲み続ける必要はありません。
公的なガイドラインでも「長く飲むほど良い」とはされていません
厚生労働省が2026年に公表した
**「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 歯科編」**では、抗菌薬による術後感染予防について、
手術開始時に十分な抗菌薬濃度が得られていることが重要であり、予防投与は術前の単回投与を基本とする
という考え方が示されています。
さらに、全身的・局所的な感染リスクのない単純抜歯については、
予防目的の抗菌薬そのものが推奨されていません。
一方、下顎の埋伏親知らずのように感染リスクが比較的高い処置では、アモキシシリンなどを抜歯前に単回投与することが推奨されています。
骨を多く削るなど手術侵襲が大きい場合や、手術中の汚染が強い場合には、術後48時間程度まで追加投与を検討するとされています。
つまり、
「抗生剤を何日も飲めば飲むほど感染予防になる」というわけではありません。
むしろ、必要以上に長く使用しないことが現在の標準的な考え方です。
なぜ抗生剤を必要以上に出さないのか
理由のひとつが、薬剤耐性菌(AMR:Antimicrobial Resistance)です。
抗菌薬を必要以上に使用すると、抗菌薬が効きにくい細菌が増える原因になります。
これは個人の問題だけではありません。
社会全体で抗菌薬が効きにくくなれば、本当に感染症を起こしたときに使える薬が限られてしまいます。
そのため厚生労働省も、抗菌薬について
「必要な病態に、適切な薬剤を、適切な期間使用する」
という考え方を推奨しています。
では、感染している場合はどうする?
もちろん、すべての患者さんが1日分というわけではありません。
たとえば抜歯前から、
* 智歯周囲炎が強い
* 膿が出ている
* 顔まで腫れている
* 開口障害がある
* 発熱などの全身症状がある
といった明らかな感染がある場合は、感染症の治療として抗菌薬を使用します。
これは「抜歯後の感染予防」とは目的が違います。
厚生労働省の手引きでも、歯性感染症では抗菌薬投与後3〜7日以内に効果判定を行い、炎症症状が消失した後24時間程度を治療終了の目安としています。
したがって感染の程度によっては、数日間抗菌薬を処方することがあります。
「1日分しかない」のではなく、「必要な量だけ処方している」
抜歯後に抗生剤が1日分しか処方されていないと、
「少なくて大丈夫なのかな?」
と思うかもしれません。
しかし、
感染がない状態で行った抜歯であれば、短期間の投与は決して不足という意味ではありません。
むしろ現在は、必要以上に抗菌薬を使わないことが、医学的にも重要と考えられています。
当院では、
* 抜歯前の感染状態
* 抜歯の難易度
* 骨削除の程度
* 手術時間
* 糖尿病などの全身疾患
* 免疫抑制剤などの服用状況
などを確認したうえで、抗菌薬の必要性と投与期間を判断しています。
ただし、抜歯後に
* 腫れが日に日に強くなる
* 発熱がある
* 膿が出てくる
* 強い開口障害が出てきた
* 飲み込みにくい
などの症状がある場合は、術後感染の可能性もあります。
その場合は抗菌薬の追加だけでなく、傷口の確認や洗浄、排膿などが必要になることもありますので、早めにご相談ください。
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監修歯科医師
医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA
- 〔院長略歴〕
- 鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
- 〔所属学会・所属団体〕
- 歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会

