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抜歯後3日目、まだ痛い。これってドライソケット?

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・ 親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

親知らずを抜歯した患者さんから、最近よくいただく質問があります。
「抜歯したところがまだ痛いのですが、これは普通ですか?」
「ドライソケットになっていませんか?」
抜歯後に痛みがあると、「もしかしてドライソケットでは?」と心配になる方は少なくありません。
しかし、抜歯後に痛みがあること自体は異常ではありません。
今回は、
・一般的な抜歯後の痛み
・ドライソケットによる痛み
この2つが何が違うのかを、病態・痛みの経過・NRS(痛みの数値)・実際の診察所見から整理します。

そもそも、普通の抜歯後疼痛はなぜ起こる?

親知らずの抜歯は、歯を抜くだけではありません。
特に横向きや埋まっている親知らずでは、
・歯肉を切開する
・周囲の骨を削る
・歯を分割する
・周囲の組織を圧排する
といった外科的な操作を行います。
そのため抜歯後には、手術部位に炎症反応が起こります。
これに加えて、周囲の筋肉や骨膜への刺激、腫脹なども加わり、痛みが生じます。
つまり、通常の抜歯後疼痛は、手術によって生じた組織損傷に対する正常な炎症反応の一部です。
一般的には術後早期、特に当日から翌日に痛みが強くなり、その後は徐々に軽減していく経過をとります。第三大臼歯抜歯では、鎮痛薬の使用も最初の48〜72時間に多いことが報告されています。

では、ドライソケットとは?

通常、歯を抜いた穴には血液がたまり、やがて「血餅(けっぺい)」と呼ばれる血の塊ができます。
この血餅は、単に血が固まっているだけではありません。
抜歯した骨の表面を覆い、外部から保護するとともに、その後の治癒を進めていくための非常に重要な役割があります。
ところが何らかの原因によって、この血餅が十分に形成されなかったり、形成された血餅が早期に崩壊・消失してしまうことがあります。
すると、抜歯窩の骨が十分に保護されない状態となります。
これが、いわゆるドライソケット(抜歯窩治癒不全・歯槽骨炎)です。
現在では、その病態には血餅の線維素溶解、つまり形成された血餅が早期に分解されてしまう現象が関与していると考えられています。ただし原因は一つではなく、外科的侵襲や細菌など複数の因子が関与するとされています。

一番大切なのは「痛みの強さ」より「痛みの経過」

ここが非常に重要です。
ドライソケットかどうかを、
「痛みが強いからドライソケット」
「痛み止めなしでも耐えられるからドライソケットではない」
と、痛みの強さだけで判断することはできません。
むしろ重要なのは、痛みが時間とともにどう変化しているかです。

一般的な抜歯後疼痛

例えば、
抜歯当日 NRS 6
翌日   NRS 7
3日目   NRS 5
4日目   NRS 3
5日目   NRS 2
という経過。
まだ多少痛みが残っていても、全体として右肩下がりになっているのであれば、通常の術後経過として矛盾しません。

ドライソケットを疑う経過

一方、
抜歯当日 NRS 4
翌日   NRS 4
3日目   NRS 7
4日目   NRS 8
5日目   NRS 8
というように、
一度落ち着きかけた痛みが再び強くなる
あるいは
数日経過しても強い痛みがほとんど改善しない
場合には、ドライソケットを疑います。
典型的なドライソケットでは、抜歯後1〜3日頃から痛みが増強することが知られています。

NRSとは?

NRS(Numerical Rating Scale)は、痛みを
0=まったく痛くない
10=想像できる中で最も強い痛み
として患者さん自身に数字で表していただく方法です。
非常に便利な指標ですが、注意点があります。
それは、痛みの感じ方には大きな個人差があるということです。
同じ程度の抜歯をしても、
「NRS 3くらいです」
という方もいれば、
「NRS 8です」
という方もいます。
実際、術後疼痛には患者さんごとの差が大きく、NRSの数字だけで正常・異常を判定することはできません。
ですから私たちが診察するときも、
「今何点ですか?」だけではなく、「昨日と比べてどうですか?」
という質問を非常に重要視します。
NRSそのものより、NRSの推移を見るということです。

普通の術後痛とドライソケットの違い

整理すると次のようになります。
・一般的な抜歯後疼痛 ドライソケット
・病態 手術侵襲に伴う炎症 血餅の崩壊・消失を伴う治癒障害
・痛みのピーク 当日〜翌日頃が多い 1〜3日後から強くなることが多い
・その後 徐々に軽減 強い痛みが持続・増悪
・鎮痛薬 比較的効きやすい 効きにくいことがある
・抜歯窩 血餅・肉芽組織を認める 血餅が欠如し、骨が露出することがある
・痛みの範囲 抜歯部周辺中心 耳・側頭部・顎などへ放散することがある
・口臭・嫌な味 必ずしもない 認めることがある
ドライソケットでは、抜歯窩から耳や側頭部などへ響くような強い痛みや、血餅の欠如、骨の露出、口臭や不快な味などを伴うことがあります。

「穴が空いている=ドライソケット」ではありません

ここも非常によく質問されます。
親知らずを抜いたあと、鏡を見ると
「大きな穴が空いている」
「中が白っぽく見える」
ということがあります。
しかし、抜歯した穴が残っていること自体は正常です。
抜歯窩は一晩で塞がるものではなく、時間をかけて肉芽組織、軟組織、骨へと置き換わっていきます。
したがって、
穴がある=ドライソケット
ではありません。
診断には、痛みの経過と抜歯窩の状態を合わせて判断する必要があります。

腫れているからドライソケット、でもありません

逆に、
・腫れが急激に強くなる
・発熱する
・膿が出る
・飲み込みにくい
・数日経ってから腫脹が増加する
といった症状がある場合には、ドライソケットとは別に術後感染などを考える必要があります。
ドライソケットは強い痛みを生じますが、必ずしも細菌感染そのものを意味する病態ではありません。そのため「ドライソケットだから抗菌薬」というわけでもありません。

こんな場合は一度診察を

抜歯後、
・3〜4日経っても痛みがほとんど改善しない
・一度軽くなった痛みが再び強くなった
・NRS 7〜10程度の強い痛みが続いている
・鎮痛薬を飲んでも十分にコントロールできない
・耳やこめかみまでズキズキ響く
・強い口臭や嫌な味がする
・抜歯窩の骨が露出しているように見える
といった場合には、一度診察を受けることをおすすめします。

最後に

抜歯後の痛みについて最も大切なのは、
「痛いか、痛くないか」ではなく、「昨日より良くなっているか」
です。
難しい親知らずの抜歯であれば、術後にNRS 6や7程度の痛みを感じること自体はあり得ます。
一方、痛みがそれほど強くなかったとしても、数日経って改善せず、むしろ増悪している場合には診察が必要になることがあります。
痛みには非常に大きな個人差があります。
そのためオヤアゴクリニックでは、単純な痛みの数字だけではなく、
痛みがいつ始まり、どのように変化しているのか。
抜歯窩がどのような状態になっているのか。
この2つを合わせて判断しています。
「この痛みは普通なのかな?」
「ドライソケットなのかな?」
と不安な場合には、自己判断で我慢し続けず、お気軽にご相談ください。



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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会