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親知らず抜歯後のしびれは何人に1人?下歯槽神経・舌神経麻痺の確率と治る可能性

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・ 親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

下の親知らずを抜歯するときに、
「神経麻痺の可能性があります」
と説明を受けたことがある方も多いと思います。
すると当然、
「実際、どのくらいの確率で起こるの?」
「もし麻痺が出たら治るの?」
「治らなかった場合はどうするの?」
という疑問が出てきます。
今回は、下の親知らずの抜歯に関係する「下歯槽神経」と「舌神経」について、現在報告されているエビデンスをもとに整理してみます。

そもそも「神経麻痺」とは?

まず「麻痺」という言葉から、顔が動かなくなるような状態を想像される方がいます。
しかし、親知らず抜歯後に問題となる下歯槽神経や舌神経は、主に感覚を伝える神経です。
そのため症状としては、
* 感覚が鈍い
* 麻酔が残っているような感じがする
* ピリピリ、ジンジンする
* 触った感覚がおかしい
といった「感覚障害」として現れることがほとんどです。

下歯槽神経が障害されると、どこが痺れる?

下歯槽神経は下顎の骨の中を走っており、下の親知らずの歯根と非常に近接していることがあります。
障害されると主に、
下唇から顎先にかけて
の感覚が鈍くなります。
親知らずと下歯槽神経との位置関係は個人差が非常に大きく、英国Royal College of Surgeonsのガイドラインでも、歯根の暗化、下顎管の偏位、下顎管の白線消失などが神経障害のリスクサインとして挙げられています。

下歯槽神経麻痺は何人に1人?

44,171本の下顎埋伏智歯抜歯をまとめたシステマティックレビューでは、
神経障害 発生率 おおよその人数
一時的な下歯槽神経障害 約1.2% 約80人に1人
長期的に残る神経障害 約0.28% 約350人に1人
と報告されています。
つまり、多くの場合は神経麻痺を起こしません。
ただし、これはすべての親知らずを平均した数字です。
CT上で歯根と神経が接触している症例では、平均よりもリスクは高くなります。
逆に、神経と歯根が十分離れていれば、リスクはかなり低くなります。
ですから「親知らずの抜歯は○%」と一律に考えるより、その患者さん自身のCTでどのような位置関係になっているかを見ることが重要です。

舌神経麻痺は?

もう一つ、親知らずのすぐ舌側を走っているのが舌神経です。
舌神経は、
舌の前方約3分の2の感覚
を担当しています。
また味覚を伝える神経線維も一緒に走っているため、強い障害の場合には「舌が痺れる」だけではなく、まれに味覚の変化を感じることもあります。
舌神経は下歯槽神経と異なり、CTで「ここを走っている」と正確に確認することが難しく、手術方法との関係が大きい神経です。Royal College of Surgeonsのガイドラインでも、舌神経障害は術前画像よりも手術手技との関連が強いとされています。

舌神経麻痺は何人に1人?

手術方法によって数字に差があります。
舌側の組織を積極的に剥離・牽引しない通常の頬側アプローチでは、システマティックレビューで、
一時的な舌神経障害:約0.6% → 約170人に1人
長期的な障害:約0.08〜0.18% → 約550〜1,250人に1人
程度と報告されています。
つまり舌神経障害も、起こり得る合併症ではありますが、長期間残るものはかなり少ないということが分かります。

麻痺が出たら治るのでしょうか?

ここが一番気になるところだと思います。
結論から言えば、
抜歯後に出現した神経症状の多くは改善します。
特に神経が完全に切れているのではなく、抜歯時の圧迫や牽引、炎症、浮腫などによって一時的に機能が低下しているケースでは、時間とともに回復することがあります。
最近の多施設研究では、下歯槽神経障害が起こった患者さんの累積回復率は、
1か月:約25%
3か月:約60%
6か月:約71%
でした。
別の研究でも、回復は最初の3〜6か月に多くみられ、1年以上かけて改善するケースもあることが報告されています。
ですから、
「半年経った=もう絶対に治らない」
というわけではありません。
ただし、時間が経っても全く改善がみられない場合には、神経損傷の程度を再評価する必要があります。

麻痺が出た場合は何をするの?

まず重要なのは、単に「様子を見ましょう」で終わらせないことです。
麻酔が切れる時間を過ぎても感覚異常が残っている場合には、
どの範囲の感覚が低下しているのか、触覚・痛覚・二点識別などがどの程度保たれているのかを記録し、時間経過とともに変化を確認していきます。
神経が圧迫されている可能性や、骨片などによる物理的な原因が疑われる場合には、画像検査を含めた早期の評価が必要です。
初期にはステロイドを使用することもあります。近年の研究では回復を促進する可能性が示されていますが、現時点では「飲めば必ず神経が治る」というレベルの確立した治療ではありません。
一方、ビタミンB12については広く使用されることがありますが、最近の研究では明確な回復効果は確認されていません。

大切なのは「麻痺があるか」だけではなく、事前にリスクを評価すること

親知らず抜歯には神経障害のリスクがあります。
しかし、
下歯槽神経麻痺:約80人に1人程度、その多くは一時的
長期的な下歯槽神経障害:約350人に1人程度
舌神経障害:約170人に1人程度、その多くは一時的
というのが、大規模な研究からみた一つの目安です。

ただし、本当に重要なのはこの平均値ではありません。
親知らずの深さ、歯根の形態、神経との距離、年齢、骨の硬さなどによって、患者さん一人ひとりのリスクは大きく違います。
当院では必要に応じてCTを用いて神経と親知らずの位置関係を確認し、抜歯方法を検討しています。
神経との位置関係によっては、通常の抜歯だけではなく、歯冠部分のみを除去して歯根を残す「コロネクトミー」など、神経障害のリスクを下げる方法が選択肢になることもあります。高リスク症例では、コロネクトミーが通常抜歯より下歯槽神経障害を有意に減少させることも近年のメタ解析で示されています。
「神経に近いから抜けない」ではなく、
どの程度近いのか。
どの程度のリスクなのか。
そのリスクをどう下げて抜歯するのか。
ここまで評価して治療方針を決めることが、親知らず抜歯では大切です。



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会