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下歯槽神経を圧迫する深い親知らず。抜くべきか、残すべきか

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・ 親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

今回は、「抜歯できるか」ではなく、「本当に抜歯するべきか」を慎重に考える必要がある親知らずをご紹介します。
今回の患者様は、矯正治療に伴い親知らずの抜歯を検討されています。
レントゲンを見ると、下顎の親知らずがかなり深い位置に埋伏しています。

通常の水平埋伏智歯よりも明らかに深く、下顎角部に近い位置まで埋伏している親知らずです。
さらに重要なのが、歯根と下歯槽神経との位置関係です。

下歯槽神経を圧迫するように存在する親知らず

下顎の骨の中には「下歯槽神経」という神経が走行しています。
下の親知らずを抜歯する際には、この神経との位置関係が非常に重要です。
今回のケースでは、親知らずの歯根が下歯槽神経にかなり近接し、画像上は神経を圧迫するような位置関係を認めます。
このような親知らずを抜歯する場合、通常の親知らずと比較して、術後の知覚鈍麻やしびれなどの神経症状が生じるリスクをより慎重に評価しなければなりません。
もちろん「神経に近い=抜けない」というわけではありません。
しかし、矯正治療のための抜歯であればなおさら、
「抜歯によって得られるメリット」と「抜歯によって生じる可能性のあるリスク」
を比較して判断することが重要になります。

「2回法」という選択肢

このように神経との距離が非常に近い親知らずでは、場合によっては2回法を検討することがあります。
一度に親知らずを完全に抜歯するのではなく、まず歯冠部分を処置し、歯根を意図的に残すことで神経へのダメージを避け、その後、歯根が移動して神経から離れた段階で二次的に抜歯する方法です。
いわゆるコロネクトミーや、その後の二次的な抜歯を利用する考え方です。
ただし、すべての症例で予定通り歯根が移動してくれるわけではありません。
残した歯根がどの程度移動するのか、そもそも十分に移動してくれるのかは、事前に完全には予測できません。
そのため「神経に近いから2回法にすれば安全」と単純に決められるものでもありません。

歯根を残すことにもリスクがある

では、神経に近い歯根をそのまま残してしまえばよいのか。
これも簡単ではありません。
残根には感染や炎症が生じる可能性があり、長期的には嚢胞性病変などの問題を生じることもあります。
そのため当院では、通常の抜歯であれば基本的には歯根まで確実に摘出することを原則としています。
一方で、神経損傷のリスクが極めて高い場合には、すべてを取り切ること自体が患者様にとって最善とは限りません。
外科処置では、
「取り切ること」と「安全性」のバランス
を考える必要があります。

今回は、さらに抜歯を難しくする可能性が

今回の画像ではもう一つ気になる所見があります。
親知らず周囲の骨に、通常とは異なる石灰化を伴うような不透過像が認められます。
画像だけで確定診断することはできませんが、セメント質異形成症などを含めた硬組織性病変も鑑別に入れながら評価する必要があります。
もし歯根周囲の骨が通常より硬く、歯根と強固な関係を持っている場合には、歯の分割や周囲骨の削除が必要となり、想定以上に抜歯が困難になる可能性があります。
しかも今回は、そのすぐ近くに下歯槽神経が存在します。
「難しいからたくさん骨を削ればよい」という症例ではありません。
骨削除量を増やすほど、神経への侵襲についても慎重にならなければならないからです。

抜けるかどうかではなく、「抜く価値があるか」

親知らずの抜歯を専門的に行っていると、難しい親知らずほど「どうやって抜くか」に意識が向きがちです。
しかし本当に重要なのは、その一歩前です。
この親知らずは、本当に抜歯する必要があるのか。
特に今回のように、
* 非常に深い位置に埋伏している
* 下歯槽神経と極めて近接している
* 周囲骨にも通常とは異なる所見がある
* 現在は矯正治療を目的として抜歯を検討している
という条件が重なる場合には、外科的に抜歯可能かどうかだけで判断するべきではありません。
抜歯する。
2回法を検討する。
あるいはリスクを考えて経過観察する。
それぞれにメリットとデメリットがあります。
今回はCTを含めた画像所見を十分に評価したうえで、矯正の主治医の先生、そして何より患者様ご本人と、「どこまでのリスクを許容して抜歯するのか」を相談しながら方針を決めていく予定です。
親知らずの治療では、抜歯技術だけではなく、抜くべき親知らずと、あえて抜かない親知らずを見極めることも外科診療の重要な部分だと考えています。



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会