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親知らずだけではありません。最近増えている「埋伏犬歯」の抜歯

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
・ 親知らずの抜歯
・顎関節症の治療
・アスリートのための歯科治療

当院では親知らずの抜歯を専門的に行っていますが、最近少しずつ増えているのが、矯正歯科からご紹介いただく「埋伏犬歯」の抜歯です。
犬歯というと、通常は前歯の横にしっかり生えている歯をイメージされると思います。
しかし、本来生えてくるはずの犬歯が顎の骨の中にとどまり、場合によってはかなり深い位置や横向きになっていることがあります。
これを埋伏犬歯と呼びます。
今回は、矯正治療に伴って抜歯が必要となった上顎埋伏犬歯の症例をご紹介しながら、
* なぜ犬歯が埋伏するのか
* どのくらいの頻度で起こるのか
* なぜ埋伏犬歯の抜歯は難しいのか
* CTで何を確認しているのか
についてお話しします。

犬歯は、実は埋伏しやすい歯です

永久歯の中で最も埋伏することが多いのは親知らずですが、それに次いで埋伏が多いのが上顎犬歯です。
一般人口における上顎犬歯の埋伏は、おおむね1〜3%程度とされています。
また、上顎の埋伏犬歯は頬側よりも口蓋側に位置するものが多いことが知られています。
犬歯は歯列の中でも非常に重要な歯ですが、実は顎の中で形成されてから正常な位置に萌出するまでの移動距離が長く、その途中で萌出方向がずれることがあります。

今回の症例でも、通常の歯列から大きく外れた位置に上顎犬歯が埋伏しています。
しかも、単純に「少し上にある」という状態ではなく、かなり水平に近い方向へ傾斜していることが確認できます。

なぜ犬歯は埋伏してしまうのでしょうか?

原因は一つではありません。
代表的なものとして、
* 顎が小さく、犬歯が生えるスペースが不足している
* 乳犬歯が長期間残っている
* 犬歯そのものの萌出方向がずれている
* 側切歯の欠損や矮小歯などにより、正常な萌出誘導が得られない
* 過剰歯や歯牙腫などが萌出経路を妨げている
* 遺伝的な要因
などが考えられています。
特に上顎犬歯には、隣にある側切歯の歯根を一つの目印として萌出してくるという考え方があります。
そのため側切歯の形態や位置に異常があると、犬歯が正常な萌出経路から外れる可能性があります。
一方で、口蓋側に埋伏する犬歯では、必ずしも「スペース不足」だけでは説明できません。
つまり、
「顎が小さいから犬歯が埋まった」
というほど単純な話ではなく、複数の要因が関係することがあります。

パノラマだけでは分からない。そこでCTが重要になります

埋伏犬歯の治療では、パノラマX線写真だけでなく、必要に応じてCBCTによる三次元的な診断が非常に重要になります。

正面から確認すると、犬歯が通常の歯列から大きく離れた位置に存在していることが分かります。
ここで重要なのは、
「埋まっている」という情報だけでは抜歯の難易度を判断できない
ということです。
確認するのは、
* 犬歯が頬側にあるのか、口蓋側にあるのか
* 歯冠がどちらを向いているのか
* 歯根がどこまで伸びているのか
* 歯根が湾曲していないか
* 隣接する歯の歯根との位置関係
* 鼻腔や上顎洞との位置関係
* 切歯管などの重要な解剖学的構造との位置関係
などです。

今回は「口蓋側」からアプローチしました

CTを水平断で確認すると、犬歯が歯列よりも口蓋側の深い位置に存在していることが分かります。
このような症例では、頬側から無理に到達しようとすると削除する骨の量が増えてしまう場合があります。
そのため今回は、CT上の位置関係を確認したうえで口蓋側からアプローチしました。
ただし、口蓋側からの抜歯には口蓋側特有の難しさがあります。
口蓋には大口蓋神経・大口蓋動静脈が走行しており、前方の正中付近には切歯管と鼻口蓋神経・血管があります。
したがって、
「歯がある場所まで切って、骨を削って、取ればいい」
というわけではありません。
切開線をどこに設定するのか、どの方向から骨を削除するのか、どこまで剥離するのかを、CTを見ながら事前にイメージしておく必要があります。

犬歯の抜歯が親知らずより難しくなることもあります

「親知らずではないから、抜歯は簡単なのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、実際にはその逆になることがあります。

今回の症例で難しかったポイントの一つが、犬歯の歯根の長さと形態です。
犬歯はもともと永久歯の中でも歯根が非常に長い歯です。
さらに埋伏歯では、
* 歯根が長い
* 歯軸が水平に近い
* 歯根が湾曲している
* 周囲を厚い骨に囲まれている
といった条件が重なることがあります。
今回も比較的深い位置にあり、歯根も長く、簡単に脱臼して抜けてくるような状態ではありませんでした。
そのため周囲の骨を必要最小限に削除し、必要に応じて歯を分割しながら、周囲組織を傷つけないよう少しずつ摘出していきます。
実際、今回の抜歯もなかなか大変な症例でした。

口蓋側の手術では「出血への対応」も重要です

口蓋粘膜は血流が豊富です。
さらに先ほどお話ししたように、大口蓋動脈をはじめとする血管が存在するため、切開・剥離の位置によっては出血量が増える可能性があります。
出血そのものをゼロにすることはできません。
重要なのは、
どこに血管が走っているかを理解したうえで手術を行い、出血した場合にも確実に止血できること
です。
これは親知らずの抜歯にも共通しますが、難しい抜歯ほど「歯を抜く技術」だけではなく、周囲の解剖を理解して合併症をコントロールする能力が重要になります。

埋伏犬歯=すべて抜歯、ではありません

ここは非常に重要です。
埋伏している犬歯をすべて抜歯するわけではありません。
犬歯は咬み合わせや審美性の面でも重要な歯ですので、年齢、埋伏位置、歯軸、歯根の完成度、周囲の歯との位置関係などによっては、
外科的に犬歯を開窓し、矯正装置を付けて牽引する
という治療が選択されます。
一方で、
* 埋伏位置が非常に深い
* 水平的に大きく偏位している
* 歯根形態などから矯正牽引が困難
* 隣接歯への影響が懸念される
* 矯正治療計画上、保存するメリットが乏しい
などの場合には、矯正歯科の先生と治療計画を共有したうえで抜歯が選択されることがあります。
今回も、矯正歯科の先生からご紹介いただき、矯正治療計画の一環として抜歯を行った症例です。

埋伏歯は「抜けるか」ではなく「どう抜くか」

親知らずでも、犬歯でも、埋伏歯の抜歯で私たちが重視しているのは、
単に抜歯が可能かどうかではありません。
CTから、
「どこからアプローチするのか」
「どの程度の骨削除が必要なのか」
「歯をどこで分割するのか」
「周囲にどのような神経・血管・隣接歯があるのか」
を事前に把握し、できるだけ周囲組織への侵襲を抑えながら安全に抜歯することが重要です。
今回のような上顎口蓋側の深い埋伏犬歯は、一般的な親知らずとはまた違った難しさがあります。
最近、当院でも矯正歯科の先生から埋伏犬歯や矯正治療に伴う難しい抜歯をご紹介いただく機会が増えてきました。
親知らず・顎関節症クリニック銀座では、親知らずだけでなく、CTによる三次元的な診断をもとに、さまざまな埋伏歯の抜歯にも対応しています。
矯正治療中に「埋伏している犬歯の抜歯が必要」と言われた方や、難しい位置にあるため口腔外科での抜歯を勧められた方は、一度ご相談ください。



オヤアゴ院長ブログ
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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会