Blogブログ
home ブログ 抜きにくい親知らずは「向き」だけで決まらない セメント質骨異形成症を疑う紹介抜歯ケース

抜きにくい親知らずは「向き」だけで決まらない セメント質骨異形成症を疑う紹介抜歯ケース

こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
* 親知らずの抜歯
* 顎関節症の治療
* アスリートのための歯科治療

親知らずの抜歯依頼では、
「横向きに埋まっているか」
「神経に近いか」
「上顎洞に近いか」
といった点がよく注目されます。
もちろん、それらは非常に大切です。
しかし実際の抜歯難易度は、それだけでは決まりません。
歯の形、歯根の肥大、周囲骨の硬さ、病変の有無、そして「抜くために歯が動く余白」があるかどうか。
これらが組み合わさることで、抜歯の難易度は大きく変わります。
本日は、他院より抜歯依頼をいただいたケースです。
今回の画像では、親知らずの周囲に通常の歯槽骨とは異なる不透過像が確認されます。
セメント質骨異形成症、骨硬化像、過剰セメント質症、セメント芽細胞腫などが鑑別に挙がるような所見です。
セメント質骨異形成症は、顎骨に生じる良性の線維骨性病変の一つで、無症状のままレントゲンで偶然見つかることもあります。成熟に伴い、画像上では透過像から混合像、さらに不透過像へ変化することがあり、典型例では病変と歯根が癒合していない点が鑑別上重要とされています。
ただし、画像だけで確定診断を行うものではありません。
今回も「セメント質骨異形成症の可能性を含めて考えるべき所見」として捉え、抜歯の難易度とリスクを評価します。

パノラマ画像で見えること

パノラマ画像では、下顎の親知らずが後方に位置し、通常の萌出方向とは異なる形で埋伏していることが分かります。
さらに注目すべきは、歯の周囲に見える骨様・セメント質様の不透過像です。
単に親知らずが埋まっているだけでなく、周囲骨が硬化している、あるいは歯根周囲に石灰化物が存在している可能性があります。
このようなケースでは、通常の親知らずのようにヘーベルで軽く動かして抜ける、という展開にはなりにくいことがあります。
抜歯において大切なのは、歯を「引っ張る力」ではありません。
歯がどの方向に動けるか。
どこに抵抗があるか。
どこを分割すれば安全に撤去できるか。
つまり、力ではなく設計です。

CTで確認するポイント

CT画像では、親知らずの位置関係がより明確になります。
この断面では、歯の周囲には比較的高濃度の硬組織が存在しているように見えます。
特に今回のように、周囲骨が硬い、歯根周囲に石灰化物がある、歯を動かす方向が制限されているケースでは、慎重な術前診断が必要です。

別断面で見ると、さらに難易度が分かる

別の断面では、歯の周囲と骨との関係がより立体的に確認できます。
親知らずの周囲に硬組織が存在し、歯と骨の境界が分かりにくい部分があります。
このような場合、抜歯時に歯が素直に動かず、骨と一体化しているような抵抗を感じることがあります。
鑑別としては、
セメント質骨異形成症、限局性の骨硬化、過剰セメント質症、セメント芽細胞腫、歯牙腫様の硬組織病変などを考えます。
セメント質骨異形成症では、無症状で典型的な画像所見を示す場合、不要な外科的介入や生検は避けるべきとされることがあります。理由は、成熟した病変では血流が乏しく、感染を起こした場合に治療が難しくなるためです。
一方で、親知らずそのものに炎症、清掃不良、隣在歯への悪影響、将来的な感染リスクがある場合には、抜歯の必要性を改めて検討します。
大切なのは、
「病変があるから抜けない」
ではなく、
「病変の性質、歯との関係、抜歯目的、術後リスクを総合して判断する」
ということです。

なぜ抜歯が難しくなるのか

このようなケースで抜歯が難しくなる理由は、大きく分けて4つあります。
第一に、歯が骨の中に深く位置していること。
埋伏が深いほど、術野の確保が難しくなります。
第二に、下歯槽神経と近いこと。
力の方向を誤ると、神経麻痺につながる可能性があります。
第三に、歯の周囲骨が硬いこと。
通常の抜歯では、歯根膜腔や周囲の海綿骨がわずかにたわむことで歯が動きます。
しかし硬化した骨や石灰化物が周囲にあると、その「逃げ」が少なくなります。
第四に、歯根形態が通常と異なる可能性があること。
歯根肥大、根湾曲、過剰セメント質の付着などがあると、抜歯窩の出口よりも歯根が大きく、途中で引っかかることがあります。
つまり、抜けない理由は「根が長いから」だけではありません。
歯が出ていくための道が、最初から狭いのです。

当院での対応

このようなケースでは、まずCTで三次元的に確認します。
確認するポイントは、
親知らずの向き、歯冠の位置、歯根の形態、上顎洞との距離、周囲骨の厚み、病変と歯根が一体化しているかどうかです。
そのうえで、必要に応じて歯冠分割、歯根分割、最小限の骨削除を組み合わせます。
力任せに動かすのではなく、
抵抗している部分を見極め、
歯が安全に出てくるルートを作る。
外科処置では、ここが非常に重要です。
抜歯は「抜く」処置でありながら、実際には「安全に撤去するための道を設計する」処置でもあります。

まとめ

親知らずの抜歯は、見た目以上に奥が深い処置です。
横向きかどうか。
神経や上顎洞に近いかどうか。
それだけでなく、歯の周囲にどのような骨性変化があるか、歯根がどのような形をしているか、歯がどの方向に動けるかを確認する必要があります。
今回のように、セメント質骨異形成症を含む硬組織性病変が疑われるケースでは、通常の親知らず抜歯とは異なる視点が求められます。
親知らず抜歯において大切なのは、強い力ではなく、正確な診断と撤去ルートの設計です。
オヤアゴクリニックでは、他院からの親知らず抜歯依頼に対して、レントゲン・CT画像をもとに難易度とリスクを評価し、それぞれのケースに応じた方法で対応しています。
親知らずは、ただの「余った歯」ではありません。
ときに、その奥には顎骨の状態、病変の有無、将来の感染リスクまで隠れています。
だからこそ、抜歯前の診断が重要になります。



オヤアゴ院長ブログ
https://ameblo.jp/kojima-dental
ご相談・ご予約は公式HPからどうぞ
親知らず・顎関節症クリニック銀座 公式サイト
https://ginza-oralsurgery.com/
無料LINE相談も実施中(予約対応もできます)
https://lin.ee/Bz8QkWi

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会