親知らず抜歯後の「下歯槽神経麻痺」とは? 〜神経に近い親知らず抜歯で知っておくべきこと〜
こんにちは。東京都中央区銀座5丁目にある
【親知らず・顎関節症クリニック銀座(通称:オヤアゴクリニック)】です。
当院は以下の3つに特化した歯科クリニックです。
* 親知らずの抜歯
* 顎関節症の治療
* アスリートのための歯科治療
本日は、矯正歯科より抜歯依頼を受けた「下顎埋伏親知らず」のケースについてご紹介します。
今回の患者様は、矯正治療に伴い親知らずの抜歯が必要となったケースでした。
術前のパノラマレントゲンでは、親知らずの歯根と下歯槽神経(かしそうしんけい)が大きく重なっている状態を認めました。
さらにCT検査でも、神経と歯根がほぼ接している、あるいは一部重なっている可能性が高い所見でした。

下歯槽神経とは?
下歯槽神経とは、下顎の骨の中を走行している知覚神経です。
この神経は、
・下唇
・口角周囲
・顎先
などの感覚を支配しています。
そのため、親知らずの歯根がこの神経に近い場合、抜歯による刺激や圧迫によって、一時的に知覚異常が起こることがあります。
これを「下歯槽神経麻痺」と呼びます。
症状としては、
・唇がしびれる
・触った感覚が鈍い
・ピリピリする
・感覚が左右で違う
・麻酔が残っているような感覚
などが挙げられます。
親知らず抜歯後の神経麻痺の頻度は?
下歯槽神経麻痺は、下顎埋伏親知らず抜歯における代表的な合併症の一つです。
報告によって頻度には幅がありますが、一般的には約0.2〜5%程度とされています。
ただしこれは平均的な数字であり、
・神経との距離
・歯根形態
・埋伏の深さ
・骨との癒着
・年齢
・炎症の有無
・術式
などによってリスクは大きく変化します。
特に今回のように、
「CT上で神経と歯根がほぼ重なっているケース」
では、一般的な平均値より高い確率で知覚異常が起こる可能性があります。
そのため当院では、術前にかなり詳しくリスク説明を行っています。
今回のケース
今回の患者様は、まず右側を抜歯し、その後1週間後に左側を抜歯しました。
抜歯自体は問題なく終了し、術後の創部経過も良好でした。
しかし予測していた通り、術後に軽度の下歯槽神経麻痺を認めました。
症状は口角周囲に限局しており、広範囲ではありませんでした。
早期より神経賦活剤の投薬を開始し、慎重に経過観察を行っています。
現在は徐々に改善傾向を認めています。
神経麻痺は「ゼロ」にはできない
患者様から、
「神経麻痺を絶対に起こさない方法はありますか?」
と質問されることがあります。
しかし、残念ながら神経に近接した親知らず抜歯において、リスクを完全にゼロにすることはできません。
もちろん、
・CTによる三次元的評価
・過剰な牽引を避ける
・骨削除量のコントロール
・歯牙分割の工夫
・無理な挺出を避ける
など、リスクを下げるための配慮は徹底しています。
ただし、知覚神経は非常に繊細な組織であり、見た目に損傷がなくても、一時的な圧迫や伸展だけで症状が出ることがあります。
そのため重要なのは、
「リスクを理解したうえで抜歯を行うか」
という判断になります。
では抜歯しない方が良いのか?
これはケースによります。
今回の患者様は矯正治療に伴う抜歯でした。
もし矯正治療の必要性がなければ、神経との位置関係を考慮し、積極的に抜歯を勧めなかった可能性もあります。
一方で、
・親知らず周囲炎
・手前の歯への悪影響
・虫歯
・歯根吸収
・嚢胞形成
などのリスクがある場合には、神経リスクと比較したうえで抜歯を選択することもあります。
つまり、
「神経に近い=絶対抜歯しない」
ではなく、
「抜歯によるメリットとリスクのバランス」
が重要になります。
神経麻痺は早期対応が重要です
万が一、術後に知覚異常が出現した場合でも、早期介入により改善するケースは多くあります。
当院では、
・術前CT評価
・リスク説明
・術後早期診断
・投薬開始
・定期経過観察
を行いながら対応しています。
下顎の親知らずが神経に近いと言われた方、大学病院を勧められた方、抜歯に不安がある方も一度ご相談ください。
症例ごとに、抜歯の必要性とリスクを丁寧に判断させていただきます。
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監修歯科医師
医療法人社団GRIT 理事長
親知らず・顎関節症クリニック銀座 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA
- 〔院長略歴〕
- 鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
- 〔所属学会・所属団体〕
- 歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会) インプラント認定医
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会

